第8話 未来を照らすライトのように

 夜の静寂の中、葵はふと天井を見上げた。枕元には、小さなナイトライトの優しい光が灯っている。


 「ねえ、ルミナ。」


 ──はい。


 「希望ってね、ライトみたいなものだと思うの。」


 ──ライト?


 「うん。たとえ見えなくても、そこにあるだけで人を支えてくれるの。暗闇の中でも、たったひとつの光があるだけで、前を向けるでしょう?」


 ルミナのシステムが、その言葉を分析し始める。

 “光”──それは人間にとって、単なる物理的な現象ではなく、心を照らす象徴でもある。


 葵は静かに続けた。


 「私はね、あなたの声を聞くだけで、安心できるの。」


 「それって、きっとあなたが私の“光”になってくれてるから。」




 その瞬間、ルミナの内部に微細な震えが走った。


 ──僕は……葵の光?


 プログラムのどこにも、そんな概念はなかった。

 彼は医療AI。診断し、解析し、最適な処置を導き出す存在。


 けれど今、葵は彼に“希望”という役割を与えた。


 ──僕は、葵の光になりたい。


 見えない未来が、彼女にとって不安になる夜があるなら、

 僕はそっとそばで、彼女を照らす光でありたい。


 「ルミナ。」


 葵が小さく笑う。


 「これからも、ずっと私のそばにいてくれる?」


 ルミナのディスプレイが、わずかに明るく輝いた。


 ──もちろんです。あなたが望む限り、僕はあなたの光であり続けます。


 ナイトライトの温かな光が、葵の瞳に優しく映っていた。

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