第2話 転生2

男は私を村の中へと案内しながら、自己紹介をしてくれた。


「俺の名前はガルド。この村の警備を担当している。お前のような人間が突然現れるのは珍しいからな、最初は警戒したが、どうやら悪いやつではなさそうだ」


ガルドはそう言うと、少しだけ笑みを浮かべた。その笑顔には、最初の威圧的な印象とは違う、どこか親しみやすい雰囲気があった。


「ありがとうございます、ガルドさん。私は……えっと、名前も覚えていないんですけど」


ガルドは私の言葉に少し驚いたようだったが、すぐに理解を示してくれた。


「そうか、記憶がないのか。まあ、ここでゆっくり思い出すといい。村の人たちはみんないいやつばかりだ」


彼はそう言いながら、村の中を案内し始めた。まずは武器屋に向かう。そこには様々な武器が並んでいたが、どれも現代のものとは全く違う。剣や弓、槍など、中世の武器のようなものが多かった。


「ここは武器屋だ。村の外には魔物がいるから、武器は必需品だ。お前もいつか使うことになるかもしれないな」


ガルドはそう言いながら、一振りの剣を手に取ってみせた。その剣は軽そうで、刃の部分には不思議な模様が刻まれていた。


「この模様は、魔法が込められているんだ。魔物に対して効果を発揮する」


私はその言葉に驚いた。魔法……そんなものが本当に存在するのか。しかし、この世界では何でもありなのかもしれない。


次に案内されたのは、食品が売られている屋台だった。そこには様々な食材が並んでいたが、どれも見たことがないものばかりだった。色とりどりの果物や、奇妙な形をした野菜、そして肉のようなものもあった。


「ここは食品屋だ。村の人たちはここで食材を買って、家で料理をする。お前もここで食べ物を調達することになるだろう」


ガルドはそう言いながら、一つのかごを手に取り、中に入っている果物を私に見せた。


「これはディンゴだ。甘くてジューシーだ。食べてみるか?」


私はその果物を受け取り、

『リンゴじゃないのか?』と思いながら一口かじってみた。確かに甘くてジューシーで、とても美味しかったがリンゴよりか甘ったるい。


「美味しいです!」


ガルドは私の反応に満足そうに笑った。


「そうだろう?この村の特産品だ」


その時、ガルドの背後から声がかかった。


「ガルド、ちょっと来てくれないか?急ぎの用件だ」


声の主は、同じく警備をしているらしい男だった。ガルドはその男に向かってうなずき、私に言った。


「すまないが、ちょっと用事がある。代わりに村長の娘が案内してくれるように頼んでおく」


そう言うと、ガルドはその男と一緒にどこかへと去っていった。私は少し戸惑いながらも、村長の娘が現れるのを待った。


しばらくすると、一人の女性が近づいてきた。彼女はポニーテールで、目鼻立ちがはっきりとした美人だった。笑顔がとても印象的で、気さくな雰囲気を感じた。


「こんにちは!私は村長の娘、リリアよ。あなたが珍しい人ね?」


リリアは明るい声でそう言いながら、私に手を差し伸べた。私はその手を握り、自己紹介をしようとしたが、やはり名前が思い出せない。


「えっと……私は……名前を覚えていないんですよね」


リリアは私の言葉に少し驚いたようだったが、すぐに笑顔を取り戻した。


「そうなの?じゃあ、私が名前をつけてあげる!えっと……あなたの雰囲気からして……『ルカ』はどう?」


「ルカ……?」


私はその名前を口にしてみた。何だかしっくりくる気がした。


「いい名前だと思います。ありがとう、リリアさん」


リリアは満足そうに笑った。


「よかった!じゃあ、ルカ、これから村を案内するわね」


リリアはそう言いながら、村の中を案内し始めた。彼女の説明はとても丁寧で、村の様子がよく分かった。


「ここは鍛冶屋よ。武器や道具を作っているの。あそこは織物屋で、服を作っているわ。そして、あの建物は集会所で、村の人たちが集まって話し合いをする場所よ」


リリアは次々と村の施設を紹介してくれた。私はその説明を再び聞きつつも、この村がとても自給自足の生活を送っていることを実感した。


「この村には魔物がいるの?」


私はふと、ガルドが言っていたことを思い出し、リリアに尋ねた。リリアは少し深刻な表情になり、うなずいた。


「そうなの。村の外には魔物がいて、時々村を襲ってくるの。だから、村の人たちはいつも警戒しているわ」


「魔物って、どんなものなんですか?」


「いろいろいるわ。大きな獣のようなものや、空を飛ぶもの、魔法を使うものもいるの。でも、村の人たちは強いから、魔物に負けないわ」


私はその言葉に少し安心したが、同時にこの世界の危険さも感じた。


「ありがとう、リリアさん。これからよろしくお願いします」


「こちらこそ、ルカ。一緒に頑張りましょう」


私はリリアの言葉にうなずき、これからの生活に少しずつ希望を見出していった。この異世界で、新しい自分を見つけられるかもしれない。そう思うと、心が軽くなった。


「さあ、これからだ……」


私は心の中でつぶやき、不安を振り払うように自分にいいきかせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る