3-4話
感謝をカミュに伝えたら怒られた。理由が明白だから何もいうことはないのだけれど、もう少し優しくてもいいだろう。彼女がおもむろに立ち上がりながら怒りをぶつけてくる。
「班長?あなたがここまで考えなしに動いたら、どうなるかわかってますよね?私さっきも言いました、あなたが司令塔だって。指揮系統がない軍隊がありますか?ないですよね?私たちをそうさせたいんですか?それとも破滅願望持ちですか?あなたが持ち合わせていてはいけない最たるものですよ?」
もう少し優しくてもいいだろう。ねえ?
「あー!はいはい!ごめんって!悪かったよ、バカなことした!」
彼女の声を遮って、強引に自己中な怒りを散らす。自分でよくないことだとわかっていても、そうしてしまう時がある。今とか。
「あのですね、事態の重要さをわかっていますか?」
近くが少しだけ崩れて、ガラガラ鳴る。体を起こして地べたにふんずと胡坐をかいて座りなおした私は、立ち上がっていたカミュに怒られる。子供が親に怒られているとき、なんにも聞いていないものだが、今の私も子供のそれそのものであった。自分の体で本物の子供を覆っているのに情けない。こんな大人にはなるなよ、そう心の中で思う。
「カモミール?そんくらいにしといてやれって、な?」
グラーズの優しい声が、この時間に終焉を告げる。ありがとう、グラーズ。
「班長も記憶ないんだから、あんまり無茶するなよ、わかったか?」
「ああ、うん。ありがとう、ほんと。」
優しく諭しながら、私の服の襟元をつかんでぐっと上に持ち上げてくる。立ち上げるにしてももう少しやり方があると思う。助けた子供が私の腕に力いっぱいしがみつく。
「ごめん、カモミール。無茶なことして。」
私が謝ると、彼女はむすっと眉間に皺を寄せたまま、何も声を出さずに軽くうなずいた。とりあえずは丸くおさまっただろう。
「マホは?どこ?」
「ここにいるよ~。班長、無謀だね~?」
こちらに歩いてくる彼女も、私をちくちく責めてくる。バカなことだったってわかってるから、もうやめてくれ。
「でも、よかったよ班長。前の班長だったらこうはしなかったからね。成長ってやつ?」
「無謀なことしたのに成長を喜ばれるのもなんだかうれしくないな…ありがとう。」
「はは、いい男になったな、班長。」
私を皮肉っているのか、それとも純粋にほめてくれているのか微妙なラインの言葉をぶつけてくる。ああ、正しいことをしたのか、わからなくなってきた。苦笑いではない、心からの笑みがこぼれてきているような気がした。
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特別魔獣対策課十二班
いずれ魔獣、化け物になりゆく病気「超人病」を罹患している者で構成される、魔獣を討伐または沈静化することを目的に設立された特別機関。
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ああ、こんななんでもない時間が、ずっと続けばいいのに。
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