閑話1

そもそもこの世界は私が知っている世界なのか?日本とかあるのか?パンをトースターに入れながら疑問を投げかける。

「ねえカモミール、日本って知ってる?」

「日本?知りません。」

彼女がケトルに水を入れながら答えた。違うらしい。でもまだ日本がないだけで、他の国とかならあるのかも知れない。

「じゃあ、アメリカは?」

「それも知りません。」

取り付く島はないらしい。でも、国がないだけで文化とかは同じかもしれない。さっきパンとコーヒーは通じたのだから、ある程度食は同じはずだ。トースターのつまみを適当にねじりながら質問を続ける。

「そっか。じゃあ、好きな食べ物とか聞いてもいい?」

「好きな食べ物ですか?うーん…まあ、そうですね、昔母がよく作っていたのはハンバーグだったような…」

「ハンバーグ!?ハンバーグなんだ!?そうなんだ!?」

「えっ?はい、まあハンバーグ…ですかね。」

知っている料理が出てきてテンションがおかしくなってしまった。今のままじゃ、ハンバーグで過剰に喜ぶ気狂い人間だ。でも、ハンバーグからいろいろわかるかもしれない。彼女はケトルを電源ベースに置いた。

「お母さん、よくハンバーグ作ってたんだ。君の好物だから?」

「うーん、そうでもありますけど母国料理ですからね。比較的簡単に作れますし。」

料理したことなさそう。いや、そんなことよりハンバーグが母国料理?ならドイツが、それに元になったタルタルステーキ、モンゴルやタタール人もあるかも?

「母国料理?カモミール、君ってどこ出身なの?」

「マーク帝国のフルゴス地域、まあ南側です。ハンバーグの発祥の地なんですよ。」

知らない。なんだよ、マーク帝国って。ハンバーグだけ同じで、それ以外が全部違うことがあるのか。というか帝国って、今は何年だ?そもそも西暦も通用するのか?パンの香ばしい匂いがしてくる。

「今って何年?」

「2020年です。1月、25日です。」

少なくとも2000年の歴史があるのにいまだに帝国?どういう世界なのだろう。少し焦げたにおいがしてきた。

「そっか…あとで資料と一緒に世界地図もお願いしていい?」

「了解しました。」

彼女はやはり有能だ。そう思った。パンは焼きすぎて焦げてた。


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