1-4話

私が穴を開けたはずの彼女は、もう治っていた。

「ご心配には及びません。治りました。」

おかしい。どんなに強い人体だろうとここまで治りが速いということはありえないだろう。常軌を逸している。

「…そういう病気なんです。他の人より治りが速いんです。」

「あ~。そうなんだ。ごめん。あんま聞かないほうがよかった?」

「いえ。これに関しても後ほど資料をお渡ししますので。」

この人のタブーがわからない。病気に関することって触れるべきものじゃないだろ。

資料も何のことについて教えてくれるのだろうか。個人的な病気まで教えてくれるなら、かなり踏み込んだことまで書いてあるのではないか。なんだか何も知らない人間が踏み入れる問題ではない気がする。

「小腹は空いていませんか?何か軽食でも作りますよ。」

とにかく私に料理を食べさせたいらしい。優しいのか頑固なのかよくわからない人だ。

「ああ、ああ。そうだね。お腹が空いたかも。なにか一緒に作ろうか。」

とりあえず彼女が何者なのか、なんであろうと仲良くなろう。落とした銃を隅に蹴り飛ばし、もうぬるくなったコーヒーを一気に飲み干した。

「何を作ろうか?パンでも焼く?そうだ、コーヒーは一緒にどうかな?」

仲良くなるために、わざとらしい言葉を連続で彼女にぶつけていく。仲良くなるために。

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