第2話 1962年へ

「はぁ?私が行方知らずだぁ?」


「そうだよ!20年前に爆破事故があってこの丘の屋敷は吹っ飛んだんだよ。その時ここに住んでいた人の死体一つ残っていなかったんだ。」


「ああ、タイムトラベルの実験の時に此処一体が吹っ飛んだのか!!それで私の屋敷はこんな無惨な廃墟になってしまったのか」


何を呑気に語ってんだこのロリババァは。

20年前はかなり騒ぎになって大変な事になったって母さんが言っていたんだ。


「屋敷を吹っ飛ばすなんて何をしたんだよ」


「だからタイムマシンの実験と言ってるだろうが!」


「それが胡散臭いだよ!証拠は?」


「アレだ!」


ワーゲンのカブトムシに指を指すマドカ。


「どうみても中古車だろ!」


「お前も疑り深いな…来て見ろ証拠を見せてやろう!」


マドカはそう言って車に乗り込む。


「ホラ、早く来い!」


騙されたと思いながら車に足を運び中を見る新谷。

確かに車の中は訳が解らない手作り感満載の機械に満ちていた。

しかも映画で見た様な機械までご丁寧に再現してやがる。


「どうだ!これで信用したか!」


「いやどう見ても映画のセットだ。しかも半分パクリにしか見えない」


「何がパクリだ!映画の車は高い上にもう生産されてないから手に入らなかったんだ。だからじいちゃんの愛車を譲って貰って忠実に私流に改造したんだぞ!」


「いやシフトレバーのそれとかエアコン取っ払ってつけたそのメーターとか絶対にパクリだろ!」


どんだけ崇拝してんだよ。あの映画をよ。


「嘘だと思うならタイムトラベルを見せてやろうじゃないか!」


「ああそうだな。じゃあ見せてくれよ!」


「よしいいだろ。乗りな」


「やだよ」


「揶揄ってんのか!」


当たり前だ。そんなあからさまにヤバそうなもんに乗る訳ないだろが!


「証明すると言ってるんだ。ささっさと乗れ!」


「嫌だって言ってんだろ!目の前で見せればいいだけだろうが」


「自慢の発明を自慢したいのもあるんだ!さっさと乗れ!」


自慢したいのかよ。


「わかったよ。ただし近い未来にしてくれよ。明日とかさ」


「うむ。良かろう容易い事だ!」


たく。

新谷は渋々車に乗り込む。


「では手順を教えよ。まずスイッチを入れる」


やはりシフトレバーのそれがスイッチか。

スイッチを入れると電源が入り数字が書かれたパネルが光出す。


2025年3月6日PM20:00

2025年3月6日PM20:42

2005年9月12日AM1:00


「上が行きたい時間、中が行き先現在の時間、下が出発の時間だ!」


「映画の台詞はいいから…」


「年月日は自由にインプット可能だ」


聞いてないし。


「例えば、大化の改新なら」


マドカが数字を入れる。

上の点滅が年号を表示した。

645年 6月12日 AM11:30

2025年 3月6日 PM20:43

2005年 9月12日 AM1:00


「こみっくパーティの発売日なら」


何だよそれ?


1999年 5月21日 AM10:00

2025年 3月6日 PM20:44

2005年 9月12日 AM1:00


「私のお気に入りゲーマーズの1号店の開店日なら1999年の1月だ。忘れもしないなぁ」


「あの早く明日に向かってくれない…」


「ロマンがない奴だな」


マドカは入力した。

2025年3月7日 AM6:00

2025年3月6日 PM20:45分

2005年9月12日AM1:00


「さあ準備OKだ。後は燃料を入れるだけだ!」


マドカはそう言って車から出るとボンネットを開けると灯油缶を取り出して燃料を後ろやのタンクに注入すると運転席へ戻った。


「まだ燃料入れてなかったのかよ」


新谷も車から出た。


「タイムトラベルで空になるんだ仕方ないだろ」


「何を使ってんのさ?まさか、映画と同じで核燃料じゃないよな…」


「たわけ!そんなもの使うか!犯罪だろ。私はニトロを使っているんだ!」


「へぇ、それなら確かに安全…じゃなーいっ!!」


新谷は声を上げた。


「ちょ、待ってよ。ニトロってちょっとの振動で爆発するって言うヤバい奴か!?」


「馬鹿言うな。正しく使えば怖くないわ。F1で使われてるくらいだ。安全だ。」


「安全なもんか。ていうかニトロなんてアンタの時代に買える代物じゃないだろ。あ、それこそ盗んだんじゃ!」


「馬鹿言うな!F1レーサーから拝借したんだ。けして盗んでない!」


「それを泥棒って言うんじゃないか!」


ていうかニトロなんかでタイムトラベルが出来るわけないだろ。なるほどな。ニトロなら屋敷を半壊させても不思議はないよな。


「ていうか爆破したんなら絶対に安全なもんか!やっぱり俺は帰る。」


新谷は車から降りようとする。


「あ、こら!重要参考人が降りるんじゃない!」


「誰が重要参考人だ!俺はまだ死にたくないんだよ」


車の中で揉み合う2人はやがてバランスを崩す。


「うわぁ!」


新谷はマドカの上に倒れ込み。

モニュっと彼女のおっぱいを鷲掴みしてしまった。


「いっ!」


「ひいっ!!何処触ってんだっ!このスケベっ!!」


ゲシッと新谷の身体を蹴り上げるマドカ。


「グエッ!」


新谷はパネルにぶつかってしまい拍子に年月日が適当に打ち込まれた。


1962年4月7日AM6:30


「っつ!何すんだよ!」


新谷は起き上がった拍子に何かを推してしまった。


ガタガタゴトゴトと車がすごい音を立てながら動き始めた。


「な、何だ!?」


「この馬鹿!よりによってタイムトラベルのスイッチを押したな!」


「え?」


車は急に走り出す。


「うわっ!!」


「タイムトラベルが始まったら自動でエンジンがかかる様になってたんだった!」


「は!?」


車はものすごい勢いで下り坂を走る。


「待て待て待て!ぶつかる!!」


車は丘を飛び越え道路に突っ込んで行く。

すると、車からバチバチと火花が溢れ弾ける眩い光に包まれ凄まじい爆発が起きると目の前の地面にヒビが入り割れその中へ車は突っ込んで行くと裂け目は消え凄い音と爆発を撒き散らし消えた。


一方で車は飛び込んだ裂け目の中を走っていた。凄い勢いでピンク色の空間を突っ切り車は空間から飛び出した。


「うわぁぁ!」


車はいきなり人通りの多い路地に出た。

マドカはハンドルを切り交わしたが車は道路を飛び出し空き地へ突っ込んだ。

車は空き地の茂みへダイブして止まった。


「う、うう…生きてる…」


「いててて…貴様!とんでもないことしてくれたな!」


「何言ってんだよ!アンタが突き飛ばしたからだろ!」


「だって人のおっぱいを鷲掴みしたじゃないか!いやらしいぞ貴様!」


「五月蝿い!俺はババァのおっぱいを触る趣味ないわ!」


「誰がババァだ!私はまだ20歳だ!Dカップのおっぱいを触っておいて謝らないのかこのクソ餓鬼!」


「俺の時代じゃアンタは40だろ!ババァもババァだ!」


「何だとっ!!」


「やんのかこのロリババァ!」


2人はバチバチ歪みあう。


ドッカーンと車から煙が上がる。


「て、おっぱいの話ししてる場合じゃない!一体今はいつだ!?」


マドカは慌てて年月日を確認した。


「1962年4月7日AM6:30」


「1962年だって!?昭和37年なの!?」


「マジか62年前じゃないか。まだロボコンも始まってないじゃないか!」


「そういう問題じゃない!!」


新谷は声を上げた。

タイムマシンの誤作動でどうやら昭和37年の春にタイムスリップしてしまったようだ。





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