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桐生連

第1話 現れたのはロリババァ

令和六年2025年 3月


暖かくなりとても陽気な昼下がりだが、受験生にはそれが煩わしい。

窓を見ながらため息を吐く中野新谷(なかのしんや)は何の変哲も無い18歳だ。

彼を進路希望の紙を片手にまたため息を吐く。

正直言って進路なんて何も考えて無い。

将来したい事なんかビジョンすらしてない。

ていうか、想像出来ない。


「あ、やばい。遅刻しちまう」


新谷は時計を見ると時刻は午後15時を切っていた。スーパーのアルバイトの時間に遅れてしまう。

教室を飛び出し急いで駐輪場へ向かい自分の自転車に飛び乗ると鍵を開け自転車を飛ばす。

バイト先は自分家から目と鼻先のスーパーだ。新谷は家へ帰らず真っ直ぐバイト先へ向かう。


新谷はバイト先に着くと着替えるとタイムカードを切るとバイト先のチーフに挨拶を済ませ仕事にとりかかる。

仕事は食品部で品出しがメインだ。

これが中々重労働だ。


「はぁ、こんな日々でいいのかな…」


新谷は将来に不安を感じながら仕事をしているうちに時間は過ぎあっという間に閉店時間の20時になり新谷はバイトを終えて家へ向かう。

自転車に乗って家へ向かう途中にある丘の上の無惨な屋敷跡がいつも目に入る。

何でも二十年前にガス爆発の事故があったらしく其処に住んでいた人は死体も見当たらず行方知らずらしい。


小鳥遊(たかなし)さんと言う人の家だったらしい。


「行く道がてらいつも通る場所だけど、見事に吹っ飛んでんな。何があったんだか…」


新谷は自転車をまた漕ぎ始め家へ向かう。


その時だった…


ドッカーンと爆音と共に眩い閃光が屋敷跡から出現した。

驚いて自転車から転げ落ちる新谷。


「つっ…何だ?」


新谷は自転車を乗り捨て屋敷跡へ足を運ぶ。

屋敷に着いた新谷の目の前には煙を上げている古い型の車があった。


「これ、ワーゲンのカブトムシとか言う昔の車じゃないか!?」


其処にあるのは生産中止になったワーゲンのカブトムシと呼ばれたレアな車だった。


ガチャっと車のドアが開く。


「ゲホ、ゲホ。全く荒っぽいったらない…」


中から白衣を着た少女が出て来た。


「ん?何だお前は?」


「いや、こっちの台詞なんだけど。お嬢ちゃんこんな時間に子供が何してるんだい?」


「オラ!」


「ぐえっ!」


いきなり腹を蹴られた。

新谷は膝をつく。


「誰がお嬢ちゃんだ!私は20歳だ!」


「は、20歳だって!?どうみても小学生じゃないか」


「まだ言うか!」


「わかった、わかった。悪かったよ。」


どうどうと宥める。


「で、君は誰?」


「はあ?貴様、私を知らないのか?この辺りじゃ有名な天才だぞ!」


「知らないよ。この辺にそんな人が居たなんて産まれてから十八年聞いた事もないよ」


この近辺にそんな天才が居たなんて話聞いた事すらない。


「18ってお前の方が餓鬼じゃないか!」


「成人だよ」


「馬鹿言うな!18歳は立派な餓鬼だろうが!」


「いつの時代だよ!令和2年に改変されて18から成人になったんだろ」


「令和??あ、そうか…オイお前今いつだ?」


「は?」


「今は何月何年だ!」


「令和6年3月」


「年号!!」


「2025年だよ!何言ってんだアンタ!」


「2025年…」


少女は車に飛び乗る。


「何なんだよ?」


「まじか…凄いぞっ!!」


少女は車から飛び出し笑いながら走り回る。


「ついにやったっ!!私はついに時空を超えた!!ザマァ見ろ!私はついに来たぞ!」


「アンタ、頭大丈夫?」


「少年よ!私は遂になしとげたんだ!」


「な、何を?」


「解らないのか?私はタイムトラベラー第一号だ!私は2005年からやって来たんだ!」


は?


「最初の実験で吹っ飛んだから失敗した思ったが間違いない!ここは20年後の未来だ!私は遂にタイムマシンで時を超えたんだっ!」


「ちょい待って。アンタ自分が何言ってるかわかってるの?」


「ああ!」


「じゃあ何か、あのワーゲンのカブトムシはタイムマシンだって言いたいの?」


そんな馬鹿な。世界的なタイムマシン映画じゃないんだぞ。絶対に頭がイカれてるんだ。


「アンタ病院行った方がいいよ…」


「何が気に入らない!私が大好きだった映画にあやかって、じいちゃんの車をタイムマシンに改造してこの時代に来たんだぞ!」


「アンタ熱烈な迷惑な推しって奴だろ!冗談なら他所行って言えよ!ありえないだろ!」


「だったら質問だ。未来少年。灼眼のシャナは何期まで放送した?」


「は?何それ?」


「灼眼のシャナだ!まさか知らないのか?名作中の名作小説のアニメ作品だ!まだ1話しか見てないからその後がどうなったか知りたいんだ!まだアニメやっているんだろ?」


「それなろう系原作?」


「な、なろう系??」


「小説サイトだよ。今のアニメは大半がそれだぞ。俺が知る限りそんなの見たことないよ。終わったんじゃないの?とっくに?」


「な、何だと!?じゃあ、Fateは?うたわれるものは?」


「ああ。その二つならスマホアプリで遊べるじゃないか」


「スマホ??」


「これだよ!ホラ!」


新谷はスマホを取り出しアプリを起動させFateグランドオーダーを見せた。


「これがFate!?セイバーは?衛宮は?桜は?凛は?ギルガメッシュは?」


「一度に言うなよ!古いキャラクターだろ?20年前の。アンタファンなの?」


「何故だ?Fateは18禁ゲームだ!こんな健全ゲームな訳ない!!」


Fateが18禁スタートのゲームだった?

確かに父さんがそんな事言ってたような。


「Fateが18禁?それいつの話しだよ。」


「じゃあ、うたわれるものは?ハクオロは?エルルゥは?どうなった!?」


「いや俺ロストフラグはやってないから知らないよ」


「ロストフラグ?まさかうたわれるものも健全ゲームになったのか!?18禁だったのに!?」


いちいちリアクションするなよ。


「アンタ知識偏ってないか?18禁ゲームがアニメ化?そんなのいつの時代だよ。今はなろう系小説やジャンプとか見たいな完成された作品が占めてるんだぞ」


「なろう系、なろう系って言ったいどんな作品か言ってみろ」


「異世界転移物だな。無職転生、盾の勇者の成り上がりとか」


「全然解らない」


突然愕然とする少女。


「マジで言ってんの?ラブライブとかホロライブとかアイマスまさか知らないの?」


「アイマス?あのXBOXのゲームの?」


「XBOXだって!随分マイナーなゲームが好きなんだね。」


「違う!アイマスはXBOXのゲームだったんだ。おまけに知名度もなかったんだぞ」


「何言ってんだよ!アイマスは世界中で愛されてるスマホゲームだぞ!侮辱するなよ」


「いや侮辱じゃない!2005年ではそうだったんだよ!ラブドルが流行っていたから…」


「もういいよ!」


これ以上話しても意味ないわ。


「ていうかアンタ本当に過去の人な訳?」


「当たり前だ!小泉総理の時代の人間だ!」


「じゃあ今の総理は言える訳?」


「小泉さんだろ!」


「全然違うから」


まるで浦島太郎だな。


「ていうか貴様散々否定しおって名を名乗らんか!」


「は?人に名前を聞くなら自分から名乗れよな!」


「いいだろ、未来少年。耳の穴かっぽじってよーく聞けっ!」


少女は車の上に仁王立ちになる。


「私はマサセッチュ工科大学を15歳で卒業した稀代の天才科学者。小鳥遊マドカだ!」


餓鬼っぽい…あれ?小鳥遊!?


「ホラ貴様も名乗らんか!」


マドカは飛び降りる。


「中野新谷だよ。なあ、アンタの住所何処?」


「は?何を言うか此処に聳え立つ屋敷こそ我が家だ!」


「アンタかよっ!爆破事故で消えた人ってのはっ!!」


新谷は声を上げた。



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