曖昧な境界線
@marufura
曖昧な境界線
夕暮れの公園、僕たちはベンチに並んで座っていた。手元のコンビニコーヒーはもうすっかり冷めている。風がそっと吹いて、彼女の髪を揺らした。
「ねえ、私たちってさ、どんな関係なんだろうね」
彼女はふいにそんなことを言い出す。
僕は一瞬だけ言葉に詰まった。何度も考えたことがあるけれど、いつも明確な答えが出せずにいた。
「……友達、だよな」
自分で言いながら、違和感が喉の奥に引っかかる。彼女は小さく笑った。
「友達かあ。そうだね、たしかに友達だよね。でも、手をつないだこともあるし、映画だって何回も二人で行ってるし……普通の友達とはちょっと違うよね」
そう言って、彼女はコーヒーのカップを両手で包む。僕は曖昧に頷きながら、空を見上げた。オレンジ色に染まった雲がゆっくりと流れている。
「……じゃあ、恋人?」
思い切ってそう尋ねると、彼女は一瞬だけ驚いたような顔をして、それから視線を逸らした。
「うーん、それも違う気がする」
当然の答えだった。僕たちは付き合っているわけではないし、はっきりとした告白をしたこともない。でも、彼女が誰かとデートしていたら胸がざわつくし、僕がほかの子と遊んでいたら、彼女はほんの少し機嫌を悪くする。
「……友達以上、恋人未満、ってやつか」
「そうそう! まさにそれ!」
彼女は嬉しそうに笑った。
「ねえ、このままでいいと思う?」
僕は彼女の顔をじっと見つめる。彼女はいたずらっぽく微笑みながら、コーヒーを一口飲んだ。
このままでも、きっと僕たちは楽しく過ごせる。でも、いずれどちらかに恋人ができたら、この関係は壊れてしまうのだろう。
「……正直、わからない。でも、今が楽しいのは確かだよ」
「ふふっ、同感」
彼女はそう言って、僕の肩に頭をもたせかけた。心臓が大きく跳ねる。これは友達のすることなのか? それとも恋人未満の特権なのか?
僕は戸惑いながらも、その温もりを拒めずにいた。
曖昧な境界線 @marufura
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