第2話 晴れときどき雪



空から女の子が降ってくる少し前……

これは俺にはまだ知り得ないお話。



では、フェルよ! 最高神の名のもとにお前をこれより神として天界に向かい入れる。



は、はい! ありがとうございます。



フェルと呼ばれた少女は深々とお辞儀をして緊張で震える手をグッと握りしめた。



ふぅ……しかし、あれほど廃れた神社から新たな神が産まれようとは夢にも思わなんだ。



最高神は自慢のヒゲを触りながら感慨深そうに物思いに耽っていた。



……廃れた……ですか。



最高神がそういった意図で言ったのではないというのは重々承知ではあるが自分にとって大切な場所をそう言葉にされてしまう原因を作ってしまった自分自身の神としての不甲斐なさや申し訳なさで顔を伏せることしか出来なかった。



いや、すまんかったの、お前さんの神社を悪く言う気はなかったのじゃ。



しまった! と、ばつが悪そうに最高神はさらにヒゲを触りだした。



さて……フェルよ、これから天界で活動するにあたり何か必要な物はあるか?



必要な物ですか?



遠慮することはない、お前さんも神なのじゃからなイケメン天使くらい侍らせてもよいのじゃぞ?



最高神はヒゲを触りながら場を和まそうと声高らかにゲラゲラと笑っていた。



……物……ではないのですが、1つ心残りがあります。



心残りとな?



顔を伏せながら10年もの間、毎日のように神社を掃除してくれて神である自分を真剣に祈ってくれていた少年のことを思い出し微笑んだ。



未熟な私が神として天界に迎えて頂けたのはあの少年のお陰です、ですが私はまだ彼の願いを叶えられていない……のです。



ふむ、あの少年か…… 神として天界に行けると言うのはお前さんにとって幸せとは言えぬのか?



いえ! 私にとって目指すべき…… そして誰よりもなりたかった! とても、とても幸せ者の神です。



なれば……



ですが、なんと言えばいいのか…… 少年の願いで神として天界に迎えられただけで少年の願いを叶えて神になったとは。



気持ちだけが先走り上手く言葉を伝えられないもどかしさでさらに落ち込んでいく自分自身が堪らなく嫌だった。



ふむ…… 言いたいことはわかった。



私が幸せになる…… とは、どう言うことなのでしょうか。



……人間の観点から見れば富豪になったり、恋をしたりじゃが……



私は人間ではないのでお金なんて…… まして神は他者と恋なんてしないので。



少しの静寂のあと何かを閃いたのか最高神はポンッと手を叩いた。



では、どうじゃ本人に直接確かめると言うのは?



へっ? それはいったい?



自分でもこんな間の抜けた声が出るのかと恥ずかしくなるが最高神は近づき話をはじめる。



ほほ、簡単じゃよ、地上に降りて少年の考えるお前さんだけの幸せとやらを確かめ、それを叶えてやればよかろう。



何か面白い事が起きる予感に最高神はイタズラ小僧のような笑みをしてはしゃぎだしている。



そのようなことをしてよ、よいのでしょうか?



よいよい、他の小うるさい神共にはわしから言っておく! ……気づかれておらぬと思っているのはお前さんだけじゃが、心ここにあらずじゃったからの。



……神として情けない限りです



フェルはまた自分の不甲斐なさに落ち込み手をグッと握りしめ深々と謝罪していた。



……では! これより最高神の名のもとに神様幸せプロジェクト(仮) を始動する!



最高神は高らかに声をあげるがフェルはとても安直でダサいプロジェクトの名前に絶句してた。



フェルよ、人間界での手続きなどはこちらでやっておく! それと連絡役の神も後から派遣するゆえ報告書を提出するように!



は、はい!



最高神は両手を前に出すと空間が歪みそして光の輪を出現させた。



これに入れば人間界じゃ、行ってくるがよいフェルよ。



フェルは震える手をグッと握りしめ光の輪にゆっくりと入り消えていった。

先ほどまでの落ち込んだ顔ではなく人々の願いを叶え導く神様としての決意が宿っていた。

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