神様が幸せになりますように
お休みなさい
第1話 夏に降る雪
誰もが一度は神様にお願いをしたことがあると思う。
お金持ちになれますように……
入学試験に合格しますように……
彼女ができますように……
1人ひとりが自分勝手なお願いをするから神様も大変だなぁと小学生のときの俺は常々思っていた。
ならこの世界に1人くらいは頑張っている神様のことを祈ってもいいのではないだろうか?
だから俺はこう願う。
神様が幸せになりますように……
んぁっ?
高校の授業が終わった後、日課の神社の掃除をしているときに居眠りをしてしまっていたようだ。
はぁ……昨夜は期末試験の勉強遅くまでやっていたからなぁ。
少し伸びをしてズボンについた土埃を払い、暗くなるまえに掃除を終わらせてしまおうとヨシっと声を出し気合を入れた。
それにしても……参拝客ずいぶん減ったよな。
小学生のときは、この神社も参拝客で賑わっていた。
俺が特に好きだったのは年末年始だ。
警察の人達が交通整理をするほど、もの凄い人達が訪れ、出店の数も多く、テントの中でお酒を飲んでいる人達が大声を出して笑い合っているのを見るのが何よりも好きだった。
いやー、伏見くんいつも掃除してもらっちゃって悪いねー!
後ろからひときわ大きな声でへらへらとお礼を言ってくるのはこの臥龍岡(ながおか)神社の宮司の美山夢子さんだ。
1年前に前の宮司さんが亡くなられてから派遣されてきたのだ。
地元の人達を紹介してもらったりほんと助かってるよー伏見くん。
いえ、なにか俺にも手伝えることがあれば遠慮なく言ってください。
じゃあお言葉に甘えてぇ、宮司の代理でもぉやってもらおうかなー くふふ、これで真っ昼間からビール飲めるぞぉー。
おおよそ神職についている者とは思えないことを言いながらふらふらと去っていく……
あの足取りまさか酒飲んでないよな? 町内会の宴会では飲みすぎていつもゲーゲー吐いているあの人ならやりかねないところが恐ろしい。
はぁ…… 掃除も終わったし、参拝して帰るか。
足早に箒を片付けて、手水で両手を洗い、口をすすいでからお小遣いの100円を震える手で賽銭箱に入れる。
実際、貧乏高校生にとって100円はかなりの痛手だ。
深呼吸をしてから二回礼して、二回手を叩き、10年前から同じお願いを目を閉じ、深く深く口にしてお祈りをする。
神様が幸せになりますように……
そして深く深くお辞儀をする。
その願い聞き届けた……
えっ?
凛とした大人の女性のようにも柔らかい幼い女の子のようにも聞こえる声に驚いて、目を開けると突然、光の粒が雪のように降り注がれながら天使のような羽をはばたかせながら女の子が空から降りてきた。
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