第3話 夕方に木霊する声
う〜ん、人間界のお茶とお団子は最高に美味ですね!
フェルちゃんだっけー こんなものでよかったらいっぱい食べていいからねー。
……なんだこれ?
なぜ、のほほんと自称神様を名乗る女の子とお茶をしているかと言うと、あのあと宮司の夢子さんが神様じゃーん、こりゃおもてなしをしないとねーと言い出し神社の社務所に連行されて今に至る。
あの、夢子さん大丈夫なんですか…… こんな得体のしれない……人? いや、神様連れ込んで?
だって神様が神社に来るのって普通だしー それにこれって宮司の仕事でしょー。
夢子さんの中ではこの空から降りてきた女の子は神様で決定のようだった。
確かに空から降りてくるなんて人間技でできることではないけどこれは漫画や映画じゃないんですから、ハイそうですかって簡単には信じられないでしょ。
あの……それで神……様? は、なんでここに来たんですか?
はっ! そうでした、私としたことがお茶とお団子が最高に美味しすぎて忘れていました。
お茶とお団子が大好きな食いしん坊の自称神様を名乗る女の子は服と姿勢を正し、コホンと嘘くさい咳払いをした。
改めまして! 私はこの臥龍岡(ながおか)神社の新しい神! になりましたフェルと申します。
わー パチパチ、よく来たねー フェルちゃーん ひゅーひゅー。
夢子さんは大歓迎の様子だ。 ……いや違う多分この人は面白そうだから絶対遊んでるだけだと思う。
今回、人間界に降りてきた理由はズバリ! 伏見さん、貴方の願いを叶えに来ました。
ひんそ……いや、可愛らしい胸を張って背伸びをして神の威厳を遺憾なく発揮しようとしている姿はなんだか微笑ましい。
俺の……願いですか?
そうです! そもそもなんですか神様が幸せになりますようにって? あれでは全然わからないですよ!
ビシっと俺の方に指を指し、頬を膨らませながら顔を覗き込んできたので気恥ずかしさから熱っぽくなるがフワッとどこかで嗅いだことのあるような匂いが…… そうだこれはイ草だ、おばあちゃんの家で嗅いだことある匂いにリラックスしたのか我に返った。
……なにか猛烈に辱めを受けたような気がするのですが…… コホン、ですので、私が幸せになると言う願いを叶えますので教えてください。
へ? いやいや、なんで俺がフェルさんの幸せがわかるんですか?
はいぃ!? 貴方の願いでしょうが!
フェルさんは素っ頓狂な声をあげ、俺と顔を見合わせ額に手を当て大きくため息をついた。
そして2人して顔を見合わせ、顎に手を当てたり首を左右に傾げたりしながらどうしたもんかと考えていたが一向に答えは出てこなかった。
ここでその答えが出てこないならさー 一緒に暮らしたり学校行ったりして時間かけて探せばー? ビールノミタイシ
頬杖をついてこちらを見ていた夢子さんが一連のやり取りに飽きたのか先程とは違い、気だるそうにしながら俺達に訊ねてきた。
暮らしたり学校って!? そんなの急に言われても無理ですって夢子さん!
伏見くんの高校への編入手続きとかは大丈夫っぽいしー 親御さんのことも気にしなくていいらしいよー。
全然、意味がわからない、なんで夢子さんがそんなこと大丈夫って? 俺の理解が追いつかない。
それなら、俺の家じゃなく、ここのほうが全然いいですよね!? さっき言ってたじゃないですか、神様が来たりするのって普通だって、ほらそのほうが神社らしいですよ! それにフェルさんってその……お、女の子じゃ……ないですか、親がいるとはいえ異性の家で暮らすなんて嫌ですよね!?
ぜぇぜぇ……恥ずかしさを隠すために早口で捲し立てたので肩で息をするほど疲れた。
いえ、私は全然平気ですが。
俺がぜんぜん平気じゃないんですよーーー!!!
俺の全力の大声が木霊し小さな神社全体に響き渡り驚いた鳥達がバサバサと飛んでいった……気がする。
神様が幸せになりますように お休みなさい @oyasuminasai33
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