22


 気持ちは燃え残ったまま。


 営業終了まであと一時間半。


 獅子尾も頑張って笑顔で接客し続けてくれている。


 俺もただ最後の最後まで全力を尽くすだけだ。


「——来栖くん、唐揚げ二つに、コロッケ三つ」


「よし、⋯⋯揚げるぞ」


 ようやく来た次の注文。


「⋯⋯メンチカツ四つもお願い!」


 続けざまに注文が入ってくる。


「追加で唐揚げ二つ!」


 ……なんだ?


 ⋯⋯いったい何が起きたんだ?


 何事かと思い、調理場から店先の様子を見た。


 ついさっきとは打って変わって、急にまた賑やかさを取り戻していた。


 集まっていたのは、見慣れた顔ぶれ——クラスメイトたちだった。


「⋯⋯そうか」


 応援に来てくれていた早乙女と牛飼。


 クラスの中心人物。


 それに二人も。


 ……あぁ、たしかにそうだったな。


 こうしてあっという間にまた行列が出来上がった。


 それを見ていた人たちも、その盛況ぶりに釣られて列を成していく。


 だんだんと列は大きくなっていき、ついには今日イチの大きさにまでなった。


 注文から会計、列の整理までこなす獅子尾。


 妹たちもぴょこぴょこと駆け回って、お手伝いを全うしてくれていた。


「はい! お兄さん、お水!」


 調理場もこれまで以上の熱気で満ちている。


「ありがとうな……!」


 水を飲み、汗を拭う。


「これは……、嬉しい誤算だな……!」


 ……初めて俺が獅子尾に接客された、あのときを思えば。


 この店もアイツも、変わったんだな……。


 活気に溢れる商店街。


 この賑わいは、日も落ちた終業時間まで絶え間なく続いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る