17


「来栖くん。今日は仕込みの量多いから、行こう?」


「あー……、よりにもよって掃除当番だ……。終わったらすぐ行くよ」


「……わかった。裏口開けておくから」


「おう」


 獅子尾は足早に教室を出て行った。


 さっさと済ませて後を追いかけるか……。


「来栖くぅーん?」


 気を抜いていると、背後からガッと肩を組まれた。


「……なんだ、早乙女か」


 適当に返すと、一層ねちっこく絡んできた。


「なんだってなんだよ。いやそれよりさ? ももと仲直り……どころか、だいぶ仲良くなったみたいだな?」


「ああ、まあ」


 俺の頭の中は、早く店に向かわないととばかりで満たされていた。


「何だよその反応は。あれか? 雨降って地固まる的な?」


「そんなところだよ」


 ……早く察してくれないか、早乙女?


「へぇ。……で、やっぱ気になってんの? もものこと」


「……え?」


「最初っからそういうつもりだったんだろ? この」


 ……俺が獅子尾のことを?


 そんなことはない、はず。


「……や、違うって」


「えぇ? ごまかすなってぇ」


 しばらくダル絡みされながらも、なんとか掃除当番の仕事を終え、精肉店に向かった。

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