16


 その日の放課後は店に向かってとにかく走った。


「……今日からよろしくお願いします!」


 俺の声に気合いが入りすぎていたか、獅子尾は肩を縮めた。


「そんな改まらなくてもいいのに」


 お手伝い初日。


 とは言っても、肉をカットしたりの作業はまだできない。


「……お会計一六二〇円です!」


「……ありがとう。あなた、明るくていいわね」


「いえ! またお待ちしてます!」


 意外と明るい接客ができていたのか、何人ものお客さんに褒めてもらえた。


 愛想だけはいいのが、初めて役に立った。


 今日は会計を担当し、肉の部位とか、簡単な包装の取り扱い方を教わった。


 そうしてあっという間に日は落ちて、営業終了の時間になった。


「……今日は助かりました。ありがとうございます」


「おう、いいってことよ!」


 鼻の頭を親指で弾く。


「……ふふ、何それ」


 こうやって獅子尾が笑ってくれることも増えてきた。


「仕事はだいぶ楽になった?」


「はい。おかげさまで」


 獅子尾の表情も、いつもより楽そうに見える。


 しかし今日一日手伝っただけで、いろんな課題がわかってきた。


「こんな忙しいのに、毎日授業も受けてたりしてたんだな」



「忙しくても、辛くはないから」


 俺より大変だったはずなのに、元気も有り余っているようだ。


「今日はゆっくり休めよ?」


「はい。……それで、良かったらまた明日も手伝って欲しくて……」


 ずっと待っていた言葉。


 ただ今は、素直に受け止められる。


「……もちろん。任せてくれよ?」

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