13


「「かーらーすー、なぜなくのー? ——」」


 途中からは一緒に歌なんか歌ったりして、女の子はゴキゲンだった。


「——ここ?」


「うん」


 それで言う通りに女の子に家に着いた。


 しかしそこは、俺の目的地でもあった。


「あれ、ここって……」


「わたしのおうち、おにくやさんなの」


 女の子の家、……もとい精肉店の前で立ち尽くす。


「へぇ〜……。そう、なんだ?」


 白々しく答える。


「あ、なお! 帰ってきた!」


 玄関が開き、女の子を出迎えたのは、女の子とよく似た顔の女の子だった。


「いおり!」


 女の子が俺の手を振り解いて走っていく。


 そうして二人の同じ顔をした女の子が抱き合った。


「ど、どういう……?」


 度し難い光景に思考が止まる。


「……双子。それしかないでしょ」


 玄関の奥には、いつの間にか獅子尾が立っていた。


「何であなたが?」


 鋭い言葉で突き刺してくる。


「えっと、この子が泣いてたところを俺が見つけて……。送りにきただけだよ、ただ」


 どうにか気に触らないよう慎重に答える。


「……。……ありがとう、ございます。……ほら、なおもお礼言って?」


 ことがことだったからか、獅子尾は素直に受け入れてくれた。


「お兄さん、ありがとう!」


 なお、と呼ばれた——俺が送り届けた女の子がお辞儀をした。


「……どういたしまして」


 俺の精一杯のにこやかな表情を見せた。


 獅子尾は安心したのか、ようやく帰ってきた妹にそっと腕を回した。


「もう、どこ行ってたの?」


「……ごめんなさい」


 さすがに家族の時間には入り込めず、その場を後にしようとした。


「……それじゃあ、俺はこの辺で」


「待って」


 それを止めたのは獅子尾からだった。


「ちゃんとお礼させてください」


「いいって。大したことはしてないよ」


「そうじゃなくて。私の気が済まないから。……立ち話もなんだし、上がって」

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