7
昼食の時間になった。
すぐにいつもの場所には行かず、しばらく自分の席でぼーっと一点を見つめていた。
今日はずっとこんな具合だ。
「よ、来栖。どうしたんだ? 気ィ抜けた顔して」
そんな俺に話しかけてくれたのは早乙女だった。
やっぱり、こういうときに頼りになるのがクラス長だ。
「……まぁ、ちょっと。早乙女こそ、どうして俺に?」
「約束通り、昨日のお礼だよ。アリガトな」
下の階にある自販機の缶ジュース。
さっと手に取ると、買ったばかりだからかキンキンに冷えていた。
「そんな。気にしなくていいのに」
「貸しを残しておくのは、俺のポリシーに反するからな。……で、何があった?」
根明なクラス長は気掛かりなクラスメイトを放っておけないらしい。
「じゃあ、聞くけど……。ちょっと変な質問かもしれない……んだよね」
「おう。なんでも聞け」
一呼吸おいて、意を決して聞く。
「……俺ってクラスで嫌われてる?」
早乙女の思考がショートしているのが目に見えてわかる。
やはり予想にもしていない質問だったようだ。
「いや? そんなこと……、ないよ?」
「何、今のその間」
だいぶ言葉に詰まって答えるので、さすがに不安になる。
「……どっちかって言うと、そんなん俺にもよくわからん」
仕方がなく、俺は質問の意図を話した。
「……ああ、もものことか。……ってお前、もしかしてもものこと気になって——?」
「そういうんじゃないって。むしろ嫌われてるんじゃないかって話」
「へー。で、心当たりは?」
「それがないから困ってる」
もう先ゆきが見えなくなった。
が、それより一つ引っかかることがあった。
「というか……。もも、って獅子尾のことだよな?」
獅子尾を下の名前の名前で呼ぶ間柄であることが気になった。
「そうそう。俺ともも、幼馴染なんだよ。……でも最近はめっきり話してないけどな」
……獅子尾と早乙女。
いくら幼馴染とは言えど、ここまで性格が違えばそうなるのも頷ける。
「じゃあ、最近の獅子尾のことはよくわからない?」
早乙女は天井を仰ぎ見て、何か考える素振りをした。
「そうだな。……でもたしか、ももは忙しい、とか、むぎが言ってたような」
「むぎ?」
「ああ……、ほら、牛飼むぎ、な。むぎも俺とももの幼馴染なんだよ」
牛飼、か。
クラスメイト……ではあるが、女子たちの取り巻きも多くて、住む世界がまるで違う。
もっとも、男である俺には近づくのもはばかられる人物だ。
「俺がももに聞いてみるよ。直接聞いた方が早いだろ?」
「……俺も着いて行っていいか? こっちから切り出した話だし」
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