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何より、俺の自己紹介の時に机に突っ伏して寝てた——獅子尾、とかいうヤツ。
あいつだけはいまだに許せない。
今度は煮物のにんじんに箸を突き刺す。
「——あ、いたいた。来栖ー?」
薄暗い階段の下の階から顔を覗かせたのは、クラス長の早乙女遥輝だった。
明るい性格でクラスの中心人物。
いかにもクラス長、といった人間だ。
しかし、なぜここに?
入学してから毎日ここに通い詰め、ただの一人もここに来た者はいなかったはずだが。
「いやー、こんなとこにいたんだな。ずっと探してたんだけど、この学校やけに広くて」
……俺を、探していた?
その言葉だけが頭の中をぐるぐると巡る。
「ええと、何の用?」
——パンッ!
突然早乙女が強く手のひらを合わせた。
「頼む! 今日の掃除当番変わってくんね? 放課後さ、クラス長で集まって生徒会の会議に出ないとなんだよ……」
何用か、と思えば、それは雑用だった。
「……ああ、なるほどね。それなら喜んで変わるよ」
「まじ? サンキューな! 今度なんかお礼するよ! じゃ!」
早乙女は、つむじ風のように一瞬で去っていった。
最近はこんな調子だ。
ことあるごとに、いろんな人から雑用を押しつけられる。
いわば都合のいいポジションになってしまったわけだ。
……しかし、今はそれでいいとも思っている。
別に今の現状に満足しているわけでもない。
ただ俺は、「偽善者たれ」と、やれることはなんでもやるようにしているに過ぎない。
……それでいい、と自分に言い聞かせている。
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