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花びらも散り、一カ月経てば、答え合わせが始まる。
クラス内は次第に仲のいいグループで固まるようになった。
俺は一人、教室から離れた誰も来ないような屋上前の階段で手を合わせていた。
「いただきます」
スッと里芋に箸が刺さる。
うん、今日の煮物はまぁ悪くない出来だ。
近年は安全上の理由だとかで、青春の象徴だったはずの高校の屋上は、どこも封鎖されているとかなんとか。
その薄暗い階段前の踊り場に、屋上の扉のすりガラスからわずかに光が差し込む。
とてもじゃないけど充実した学生生活とはかけ離れたような場所だ。
この時間はどこにいたって騒がしい。
安寧の場所であるはずの教室だってパーティ会場と化す。
言い方を変えれば、昼食の時間はみな思い思いの過ごし方をしている、と言える。
食堂で机を囲む者。
購買の菓子パンに列をなす者。
中庭でピクニックみたいに弁当を食べる者。
なんといったって、ここは都内に構える私立松柏高等学校。
初めて校門をくぐったあの高揚感。
あの忘れられない思いも、もう遠い過去のようで。
田舎者の俺には眩しすぎる場所だったみたいだ。
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