『愛という名の毒』

私を見つめる彼の瞳が、暗い情熱を湛えていた。

「逃げないで」

囁くような声に、背筋が凍る。けれど同時に、心の奥底が熱く蕩けていくのを感じた。

「私のことを、見ていてほしいんだ」

どれほど強く抱きしめられても痛くなかった。それより、離れていく方が怖かった。

彼の愛は狂おしいほど深く、私を溺れさせる。でも、それは私が望んだことだった。

「ねえ、僕から離れないで。僕だけを見て」

私は頷く。彼の腕の中で、蝶のように羽を畳む。

「約束する」

私たちは互いを映す鏡のよう。狂おしいほどの愛に溺れていく二人は、もう後戻りできない。

彼の愛は檻のよう。でも、その檻の中でこそ、私は自由に羽ばたける。

世界が何を言おうと、私たちにはもう関係ない。

この狂おしい愛の中で、私たちは永遠に溶けあっていく。

（終）