第3話
動物脂を使ったランプ。
ニオイが鼻を突く異臭であり、その臭いに異変を感じたのはエルフだった。
怪訝そうな顔をしながら、目を開くと共に体をゆっくりと起こすと、彼女は自分が何処に居るのかを把握する為に周囲を見回す。
そして、ベッドの近くにあるテーブルに座る、青年の後ろ姿を確認した。
フォウダンス・キッドは、かちゃかちゃと音を鳴らしながら回転式拳銃の部品を組み立てていた。
部品を研磨し、時に潤滑油を使って回転式拳銃が滑らかに動くのを確認。
立ち上がると共に、キッドはガンベルトを腰に携えると、回転式拳銃を仕舞い、腕を開いて構えた。
そして、エルフはキッドの動きを一部始終見ていたが、……一瞬、彼の動きを捉える事が出来なかった。
それは、キッドがガンベルトから回転式拳銃を引き抜く瞬間だ。
一秒よりも速く、素早く銃を引き抜き構えを取る。
その動きが、エルフの目に映らなくて、思わず眼を擦ってしまった程だ。
「……よし」
メンテナンスを終えたキッドは、ガンベルトに回転式拳銃を納めた。
最早、先程拾ったエルフの事など忘れている様子だった。
そうして、ぱちぱちと、拍手をする音に勘付き、キッドは思い出したかの様に後ろを振り向く。
にこにこと、笑顔を浮かべているエルフは、すっかり目を輝かせていた。
「なんだ、起きてたのか?」
キッドはそう言いながら、手に持つ回転式拳銃をガンベルトに納める。
エルフの方に近付くと、キッドは椅子に座り直して、エルフの顔を見た。
小奇麗なエルフだった。目が綺麗な色をしている。一つの宇宙を内包しているかの様に、黒に近しい紫色の瞳をしていた。
「……で、あんた、何者だ?アウトロウだろう?なんでこんな所に居るんだ?」
矢継ぎ早にその様に聞き出すキッド。
しかし、エルフは首を傾げていた。
「……俺の言語が分からないか?それもそうか……」
キッドは簡単な事を失念していた。
アウトロウには既に
これにより、他国の言語を自身と同じ言語として聞き、喋る事が出来るのだ。
オーガたちは、共通語変換魔法石を所持している為に、劣等民族であるキッドとも会話が可能なのだが、それがないエルフには、キッドの言葉など聞いても何も分からないだろう。
「……困ったな、話を聞こうとしたんだが」
すっかり、困り果てたキッド。
そんな彼の姿を見て首を傾げるエルフ。
唐突に、腹部から音を鳴らすと、お腹を抑えて俯いた。
エルフはお腹を空かせている様子だった。
「……飯、食うか?」
キッドは、エルフに対してそう言うのだった。
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