第4話
実に美味しくなさそうにパンを食している。
黒色のパン、これを毎日食して来たキッドにとっては慣れた味だが、エルフにとってはあまり美味しいものでは無いらしい。
「これも飲むか?」
そう言いながら、ワインを取り出したキッドは、木製のコップを取り出してワインを注ぐ。
深紅の色をしたワインをコップの半分程入れると、エルフはそれを手にして鼻を近づけた、すんすん、とニオイを嗅ぐと、それが酒である事を理解して、口を付ける。
舐める様に舌先をワインに浸す、それが飲めなくも無い味であると察すると、コップに入ったワインをちびちびと飲んだ。
「……飯を食べたら、アウトロウに引き渡すか?」
キッドは、彼女が異世界から来たアウトロウである事は確定しているので、彼女をこの領地を支配するアウトロウ共に引き渡すべきか、と迷った。
本来ならば、それが当たり前なのだろう、しかし、それをする事は、アウトロウを憎むキッドにとって、決してしてはいけない行いだと感じていた。
彼女の首に着けられた首輪、それを見て察するに、彼女もまた、アウトロウにとっての奴隷と言う立場なのだろう。
ならば、彼女もキッドと同じ境遇であると想定する、その様な輩に、この町を支配するアウトロウに差し出すなどと言う真似など出来なかった。
「……行く宛が無いのなら、此処に居れば良いさ」
彼女の顔を見る。
ワインを飲む彼女の姿を見て、美味しそうにワインを飲む姿が目に映る。
ぷは、と息を吐いて、空になったコップを見た。
「もう一杯か?」
そう言いながら、キッドはワインを再び彼女のコップに注いだ。
ボトルを持ったまま、キッドは自らもワインを飲む事にした。
一人で飲む分にはキツイ薬の様なものだが、何故か二人で飲むと暖かさを増した。
孤独であったキッドは、一時の人の温かさを感じる事が出来た。
酒に酔ったキッド。
頭が揺れる様な感覚を覚えて、ベッドに倒れる。
「ああ……畜生、目が回る」
顔を赤くしているキッド。
呼吸も荒くなっていて、身体が熱くて仕方が無かった。
「~~~」
鼻歌を奏でる、エルフが上機嫌に体を動かしていた。
母国の歌であるのだろうか、彼女の声は透き通っていて、楽器を奏でているかの様に心地良かった。
「はは、ああ……良い歌だなあ」
そう思いながら、キッドの瞼が段々と重たくなっていく。
上機嫌な思いをしながら眠るのなんて、何年振りの事だろうか、と呆然と考えていた。
「は……あぁ、……っぐえ」
途中、彼の片腕が重たくなるのを感じたが、眠気に敵う事が無く、そのまま眠りに落ちるのだった。
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