Level53C
無邪気にエントランスから外を目指すゆうを追いかけて俺たちは夜市にたどり着いた。いつも元気なゆうに比べて俺は先程のこともあってか疲れて追いかけるのも精一杯だ。
「あれれ?たける遅いねぇ!」
「今は本調子じゃないだけ…疲れてるから…」
ゆうは蓬莱麻雀荘という店を指して俺の腕を引く。そういえば彼女の家には麻雀の用意があっていつも負けていたっけ…
「たける、全部賭けようよ!」
いつの間にか入っていた500コネクトドルを右手に掴んでゆうが俺に言う。
「いやいや、流石に…」
「いいからいいから!」
結局俺は全額を賭けた。まあ金がなくたってゆうといられるならこの上ない幸せだ。それぐらい許してやろう。周りは「姉ちゃん強気だねえ」「むしり取られねえようにしねえとな」などと子供を立てるような言い草をした。
「ロン!国士無双だ!」
ゆうは強い役を目指してばっかだ。リスクを気にしないところが無鉄砲で元気なゆうらしい。その上彼女の豪運か戦術か、俺たちは賭けに勝った。勝負に勝った彼女は太陽よりも輝いた笑みでお金を握りしめていた。
「やったね!たける!これで屋台でなにか食べようよ!」
「お前は食欲まで底なしかよ…」
金の匂いには危険が集るのだろう。暴漢共が金の匂いを嗅ぎつけてきた。
「おい姉ちゃん。その金を俺たちに全部よこすかそれともイイコトするかどっちがいいよ?」
大人気なく相手はナイフをちらつかせていた。まさに典型的なチンピラだ。
「悪いけどどっちも嫌だよ」
俺は奴らに銃口を向けた。やっと会えたゆうを失うわけにはいかない。そんな考えでいっぱいだった。俺は咄嗟にゆうをこちらに寄せて叫んだ。
「今すぐ逃げるか、ここで撃たれるかどっちか選びな」
たかがチンピラだ。身の危険を感じれば走って逃げていった。
「たけるたまにはやるじゃん!」
「たまにはとはなんだたまには…」
俺たちはその後店でチキンステーキを食べた。幾度となく見たゆうの見た目にそぐわない食い振りは昔の記憶を鮮明にしてくれる。
「たけるこれ美味しいね!もう1個頼んでいい?」
「まだ食うのかよ…これで4個目だぞ?」
「別にいいじゃん!たけるだって沢山食べてるんだし!」
俺の隣の十枚はある皿の山を見て、思わず自分でも軽く笑ってしまった。
「明日はあの自販機のピザがいいな!」
「ゆうは全て食い尽くす気なのか?」
俺の問いかけに対するゆうのにやけた顔は最高の思い出になった。…本当にそれがゆうなのかは、確信を持てずにいる。
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