第26話 小鬼之群

 現在カルマとエリスは、学園から遠く離れた大洞窟の最奥でゴブリンの群れに囲まれていた。後方にはざっと200以上のゴブリン、前方には小鬼之頭ゴブリン・リーダー2体と小鬼之術者ゴブリン・メイジに加え、オマエは本当に小鬼かと聞きたくなるほどの巨体をもった小鬼之長ゴブリン・ロードがいる。この状況をどうにかして切り抜けなければいけないのだが、力も数も負けている以上だいぶ厳しくなりそうだ。奥の手的な何かを期待しつつ、背中合わせになっているエリス講師に声をかける。


「エリス講師、これって勝ち目ありますかね?」


「残念だけど、ほとんどなさそう。でも大丈夫。せめてカルマだけは逃げれるように


 頑張るから、安心していい。」


「えっと、ありがとうございます?とても頼もしいです。」


だいぶ最悪を想定しているみたいだが、状況はそれほど絶望的だろうかと疑問に思う。しかし、カルマがそれを聞く前に戦いの火蓋は切って落とされた。


「コろせェ!!」


小鬼之長の号令を聞き、様子見をしていた小鬼ゴブリン達が一斉に動き出す。リーダー術者メイジなど、ロード以外のくらい持ちが前方から来ているのを確認したエリスは、そちらに向かって駆け出した。


「カルマ、どうにかして私のほうに小鬼が来ないようにして。位持ちの小鬼を優先し


 て倒すから、それが終わるまでいい。」


「了解です。安心して戦ってください。」


そこまで言ったところでカルマに小鬼たちが飛びかかってきた。数は一度に4体ほどで、広さの都合かそれ以上は同時に襲い掛かってこない。左手に持っていた松明を投げ捨てると、すぐさま抜剣する。個体差があるといえども、大抵がカルマの腰ほどの大きさをもつ小鬼たち。それらが休む間もなく襲い掛かってくるため苦戦は免れない…と思っていたのだが、


「仲間の背中を守りつつ、数えきなれないほどの敵たちと戦う…結構上がるシチュ


 エーションなんだけどなあ。相手が弱いとどうも気分が乗らない。」


呟きながら縦に一閃、それだけで2体まとめてあっけなく死んだ。そのまま流れるように斜めに斬りあげると、返す刃でさらに2体を片付ける。タイミングをズラしたりぜずに馬鹿正直に突っ込んでくるおかげで対処が簡単、加えて小鬼たちは空中にいるため、回避をしてこないのが敵の弱さに拍車をかけていた。

 

 何度も同じように斬り伏せていれば、流石に小鬼でも学習をするようで、今度はむやみに突っ込まずにジリジリと少しずつ距離を詰めて来ている。しかし、残念なことにカルマのほうは間合いに入ったところを一閃するだけでいいので、小鬼がやられることしかできていない。小鬼の対応に余裕ができたので、前方への注意を怠らずに横目でエリスの状況を確認する。パッと見た感じ、エリス講師は攻めあぐねているようだ。あの様子では長引くだろうと判断し、目の前の小鬼らを出来るだけ早く片付けるために手札をひとつ切る。。


「【アイス・フラグメント】!!」


左手を小鬼に向け、魔術を起動する。選択した魔術は、範囲型の氷魔術【アイス・フラグメント】。対象規模は通常20ほどだが、目標の捕捉を自動から手動に切り替え、そこに割かれていた魔力を攻撃に回すことで数を増やす。起動と同時に徐々に空に生み出されていく拳大の氷塊…その数50。それら一つ一つの標準を設定するのには目視が不可欠なため、多少の時間がかかってしまった。今回必要としたのは約40秒ほど、その間を右手の剣で凌いで魔術を完成させる。


「待機終了…貫いてこい!」


掛け声とともに氷塊がいっせいに射出された。その氷塊はすべて狙いを違えることなく高速で飛翔し、小鬼の頭を射ち抜いていく。小鬼のあげる断末魔をものともせず、カルマは魔術を放つ態勢をとった。


「【アイス・フラグメント】」


同じ手順で氷塊が小鬼に向かって放たれる。氷塊はすべて的中し、小鬼の数をさらに減らした。それを見ながら、カルマは呟く。


「発動までに20秒程度。1度目より速いし、突き詰めればもっと速く起動できそ


 うだ。この魔術、結構使えるな。」


1度目は恐怖に固まっていた小鬼たちも2度目を受けたところで、危機感を思い出したようにカルマに向かって走り出した。しかし…


「残念ながら、動くのが遅すぎる。喰らっとけ【アイス・フラグメント】」


三度みたび起動したカルマの魔術が放たれ、数メートルも走らぬうちに小鬼たちの頭が貫かれ、倒れて行く。ものの数分のうちに150以上の小鬼を倒したカルマを恐れて、小鬼たちが逃走する。それを見たカルマは素早く身をひるがえし、エリスの援護に向かった。





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異世界学院の自称「中二病」 帝王カステラ1号 @yorunoaoi0220

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