第13話 生徒来訪
突然の出来事に驚いていると、扉に近いクラスメイトが俺のほうを指差しているのが見えた。俺のことを呼んだ黒髪の女生徒は、話していた相手に会釈をしてこちら来ようとする。俺にいったい何の用だろうか…今のところ、接点のなさそうな相手だし、そんな人がわざわざ教室を訪ねてくる理由に心当たりはない。
若干の不安を抱きつつ、すぐそばまで来た女生徒に立ち上がって、対応する。
「俺がカルマですけど、どちら様でしょうか?それにいったい何の用でわざわざこち
らに来られたんですか?」
俺の質問を聞いた周囲からの視線に「コイツマジ…?」みたいな成分が含まれたのを感じる。質問をミスったかと思うが、幸い相手は気分を害した様子もなく答えてくれる。
「私は3年2組所属のリリィ・ウィンガーデンという。一応、この学園の生徒会長
を務めている者だ。」
なんとこの方、生徒会長だった。周囲があんな視線を向けてくるのは納得といった感じだが、正直初日なんだから許してほしい。
「それで君への要件なんだがな…」
そこで一度言葉を切ると、かしこまった口調で用件を切り出してくる。
「1年3組在籍のカルマ殿、貴方をキリシュトリア学園生徒会へ勧誘しに来まし
た。良いお返事が聞けるのを、生徒会の一員として期待しています。」
瞬間、教室の一角の空気がザワリと揺らいだ。それにカルマは気づかず、リリィに疑問をぶつける。
「なぜ俺なんでしょう。俺は試験での成績がいいわけでも、何かしらの功績を立て
ているわけでもないんですが…。なにか特別扱いされる理由が?」
聞いてみると、以前レンネさんがしたような表情を浮かべる生徒会長。
「えーと…それはね」
「リリィ会長、突然ですいません。私、シュルト・ラインフォルトはその勧誘に意
義を申し立てたい。」
会長が何か答えようとした所、急に横から声がかかる。そちらを見ると、俺より少し背の高いくらいの金髪の男子生徒が立っていた。シュルトと名乗った生徒はカルマに見向きもせずに会長に向かって一方的に抗議を続ける。
「生徒会への加入資格を持つのは、力と知恵の分野で最も高い者のはずです。入学試
験の結果で、筆記は私が最上位でした。私が最も高いのに他の者が選ばれるなん
てありえません。説明を求めます。」
「…わかった。あまり他人の情報を公開することはよろしくないんだが、教えなけ
れば納得しなさそうだしな。カルマ君、彼に教えても構わないかな?」
コクコクと頷けば、こちらに小さく礼を言って会長は話を続ける。
「シュルト君は確かに筆記のトップだ。総合点でも『竜閃』に次ぐ実力を持っている
し、普通なら君を勧誘に来ただろう。」
「ではなぜ…!」
「まぁ聞きなさい。彼は、君がトップを取った魔術学ではなく一般学の試験を受け
てこの戦闘系に来ている。それも前代未聞の満点でね。難易度が違う以上、たと
え君が満点を取っていたとしてもカルマ君が勧誘される。分ったかい?」
リリィが発した言葉で教室がさらに騒がしくなった。騒いでる内容からするに、補助系以外が一般学を受けるのも、それで満点を取るのも普通じゃないらしい。レンネさんが驚くのにも納得がいった。そりゃあ同じ補助系クラスだと考えるわけである。抗議していた男子生徒を見てみると、呆然とした様子で俯いて静かになっていた。
会長はそんな様子の彼からこちらに向き直り、答えを促してくる。
「カルマ君、君の答えを聞かせてほしい。生徒会に入る気はあるかい?」
「えーと…ちょっとめんどくさそうなのでお断りしても…?」
ラインフォルトの方を見ながらそう答えると、リリィ会長は思わずといった感じで額に手をやりながら呟やく。
「それは悪手だよ…カルマくん」
「え、なにが…」
最後まで言い切る前に、横から肩をつかまれる。そちらを見れば、肩をつかんできたのは、さっきまで意気消沈だったラインフォルトだった。掴んだ手に力を込めつつ、怒りを含んだ声で話しかけてくる。
「お前ごときが私に情けをかけたつもりか?だとすれば、私は相当なめられたもの
だな…。」
その顔を見ながら、カルマは心底思う。こいつメンドクセー…
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