第9話 入学式典(上)

 年が明けて一ノ月、とうとう入学式典の日である。基本的に親族の出席はできないようなのでグレッグらは家で待っているそうだ。とても残念そうだったので、その分制服姿でサービスはしてやった。実際喜んでいるけど、購入してきた日にも同じようなことをしたんだがいいのだろうか。

 そんなこんなで時間が来てしまったので、二人に挨拶をして家を出る。そのまま道を歩けば、そこらから視線が向かってくるのが感じられる。おおかた学園の制服に注目が集まってるのだと思う。聞けば予想通り、ここらの住民で学園の生徒になること自体が珍しいらしい。もっとも街の中心にさしかかれば、そんな視線も少なくなり代わりに同じように制服を着た人が増えてくる。そんな姿を見れば、いよいよ夢の異世界学園生活が始まる実感が湧いてきた。


 学園につくと式典は講堂であることを知ったのでそちらに向かう。講堂の場所は訓練場の真反対ほどに位置しており、道中には校舎や研究棟が点在している。その様子を眺めながら講堂内に入れると自分の席を探す。式典後にはクラスごとで集合があるらしいが、席自体に制限はないので人が居ないところを探していると横合いから声がかかった。


「おや、カルマくんじゃないか。やっぱり合格してたみたいだね。」


振り返ればいつぞやの少女がいた。栗色の髪をした、少女の名前は確か…


「あ、レンネさん。お久しぶりです。無事合格できました。」


「うん、久しぶり。さっき周りを見渡してたようだけど誰かを探してるのかい?」


「いえ別に。どこか空いてる席はないかなーと。」


「そうかい、なら私の隣に座らないか?君が良いならだけどね。」


レンネさんがそう言ってきたのでありがたく座らせていただくと席に着いた俺にレンネさんから質問がきた。


「カルマくんは7組と8組どっちなんだい?」


「え?俺は3組ですけど、なぜそのふたつなんですか?」


問い返すとしばしの沈黙。反応がないことを不思議に思ってレンネさんの顔を見てみるとなんとも言えない顔で固まっていた。


「もしかして何か変でしたかね…」


「いや…そうではないんだが。そうか君は戦闘系だったのか。」


「はい、そうなんです。その、もしかしてレンネさんは7,8組の補助系なんです


 か?」


「うん、7組だね。てっきり同じコースかと思っていて驚いてしまったよ。」


学園のクラス分けは1~3組が戦闘系コース、4~6組が魔術系コースで7~8組が補助系コースとなっている。レンネさんの補助系コースは文官や治癒士などの頭脳面を軸に活動するコースなんだが、俺はそんなインドアに見えたのだろうか。

 少し不思議に思ったのでどうせなら聞いてみようとしたとき、講堂内に声が響き渡った。


『これよりキリシュトリア学園入学式典を開始します。出席者一同はこれよりお静か


 に願います。』


 式典が始まったことだし、このことを聞くのはまた今度にしようと心の中で呟いた。



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