第8話 合否発表

 試験から一週間が経ったある日の朝、学園から封筒が届いた。宛先は俺なので十中八九、合否通知だろう。そわそわと落ち着かないグレッグとリンダに見守られながら封筒を開封し、折りたたまれた紙を取り出す。恐る恐るそれを開け、中身を確認する。

 

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王都キリシュトリア学園 入学試験 合否通知書


カルマ 殿 試験結果 


 一般学 200/200 点  武術の試 118/200 点 計318点


 合格者240名中 39位


よってここに貴殿は我が学び舎に通う資格を手にした。


今後我らが下で研鑽を積む覚悟を持つならば是非とも入学されたまえ。


貴殿と共にさらなる成長を遂げるのを我が学園講師ともども心待ちにしている。

               

          キリシュトリア学園 学園長 ロック・バンドマン


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つまりこれは合k…


「うおぉぉぉぉー!!合格だぁぁ!」


「すごい!すごいわー!今夜はご馳走よー!!」


耳元で発された歓声を受けてカルマは思わず耳をふさいだ。


「どうしたカルマ、喜ばねぇのか?冷めたやつだなぁ。」


「喜ぼうとした瞬間に耳元で叫ばれればこうなりますよ!」


思わず返せば、笑ってすまされた。

 流石に耳元で叫ぶのはやめてもらいたい、正直今もまだ頭がズキズキする。二人は今も喜んでいて情熱的なハグまでしている。合格した本人である俺は置いてけぼりである。その様子を一通り眺めたら二人に向けていいことを教えてあげた。


「時間は大丈夫ですか?結構きつそうですけど。」


壁の時計を確認して真っ青になる二人。慌てて仕事用具を持つと走って家を出て行った。…別に怒っていないし、腹いせでもない、ただ親切に時間を教えただけである。わざと時間が

 


 しかし、無事合格できて安心した。筆記のほうは自信があったが、実技に関しては微妙なところだったしな。時間をおいて湧き上がってきた喜びを噛みしめると合否通知書に重なっていた、もう一枚の紙に目を通す。中に書いてあった内容は入学式と制服の手配、クラス分けについての案内だった。入学は一ノ月の中ばあたりで現在は十二ノ月もあと僅かを残すばかり、日時にはまだ余裕はあるが…。


「よっし、行くかー。」


早いに越したことはないので今から行くことに決めた。行先は街の東、物価が高く身分の高いものや金持ちたちが暮らす区域の服屋のひとつである。

 案内には制服の値段が記されていたので、それより少し余分なくらいの金を小袋に入れると家に鍵をかけて街に出た。ふらふらとそこらの店を冷かしながら歩くこと数十分目的の店が見えてくる。ドアをくぐる店員がこちらに寄ってきたので合格通知書を見せると裏に下がっていく。

 どうやらいくつかサイズを持ってきてくれるらしい。少し時間が必要なので店員を待ちつつ、店の中に目を走らせているとドアの開く音が鳴る。ちらりと店の入口に目をやると同い年くらいの赤髪の少年が入ってきていた。どこかで見たことあるような気もしたが気のせいだろうと思い、店の商品目線を戻す。


「あの、君…」


しかし流石である。俺の持っている一番良い服でもここに並んでいる最安値の商品に品質が及ばない。


「あの時の人じゃないか?」


うわっ、ひとつひとつがグレッグの給料3か月分はあるな。傷つけたときが恐ろしいし、あまり触らないようにしよう…


「聞いてるかい?出来れば無視しないで欲しいかな…。」


しかし騒がしいな。あんなに話しかけてるのに無視するなんて一体どんな奴なんだと商品から目を離すと、すぐ傍に先ほどの少年がいる。しっかりと目が合った。

 

 ………うーん。しっかり見るとわかるがこの少年けっこうな美形である。しばし現実逃避するが目が合うってことは俺のほうに話してたってことだよな?念のため後ろを確認するも誰もいない。観念して向き合うと一番大事なことを聞いてみる。


「えっとー、どちら様ですか?」


「覚えてないか。うーん…キリシュトリア学園入学試験1日目、って言ったら思い出

 

 してくれるかな?」


試験1日目にあった人…?1日目といえばシュクダイらに絡まれただけ…あ。


「小道で助けに入っていたレイ・なんちゃらおん?」


「良かった、思い出してくれて嬉しいよ。改めて紹介をしておくと、アスタリオン。 


 レイ・アスタリオンという。ここに来たということは君も学園の制服を購入に来   


 たのかな?」

 

「まあ、無事合格しましたので。アスタリオンさんも合格したんですね、おめでと


 うございます。」


「祝福の言葉ありがとう。今後は学友になるんだ、お互い精進しよう。」


そういって微笑んでくる。この人、美形で実力もあって性格もしっかりしているとか、眩しすぎる。

 同い年の少年を羨んでいると、店員が戻ってきた。レイさん、けっこう良いとこのご子息みたいでこの店の店長がわざわざ対応に出てくるレベルである。その様子を眺めつつ、店員にお金を渡して自分の制服を購入するとレイさんに挨拶をして帰路についた。



ちなみに学園の制服はなかなかのお値段でグレッグらはすごいお顔をしていた。

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