第6話 学園試験:2日目(上)
「頑張って来いよー!カルマー!」
「応援してるわー、カルマちゃん。」
「はい、頑張ってきます。父さん、母さん。」
試験2日目。少しデジャヴな会話をしつつ、家を出る。道中も昨日と同じといった感じであり、同じくチンピラに絡まれている美少女みたいな構図を見かけたが今日は無視してさっさと学園へ向かう。
昨日と同じように講師に説明を受けると今回向かうように指示されたのは訓練場だった。なんとも大きいもので受験者の大半を収容しても、なお余裕があるようで驚かされる。
しばらくすると全員集まったようで試験官の方々が現れた。武術組と魔術組に分けられると試験の説明を受ける。
「試験は講師との模擬戦。その結果をもとに受験者同士で戦ってもらいます。結果だ
けではなく試合内容も加味して採点していくので各々努力してください。では初め
に模擬戦から。読み上げられた者は前に出てきてください。まずは…。」
名前を呼ばれた奴らが続々と前に出ていく。試験開始からいくらかの時間が経ち、受験者が半数くらいまでになったところで俺の名前が呼ばれた。
「担当試験官のリッツ・カールマンだ。武器はそちらにあるものを。君の準備が出
来次第始める。分かったか?」
「あ、ハイ。了解しました。」
置いてあるものの中からやや短めの木剣と小型の丸盾、いわゆるバックラーを選ぶとリッツさんに声をかける。互いに所定の位置につくともう一人の試験官から開始の合図が出された。
「では試験開始!」
声と同時に前に距離を詰める。試験時間は5分しかないので積極的に攻めなければならない。相手の武装は目に見える限りでは普通の木剣のみ、剣を構えていない左手側から剣を振るう。
「…っ!?」
瞬間、目の前から姿が消えた。咄嗟に振り向きながら左手の盾を突き出すと、軽い衝撃が襲ってくる。その勢いのままに転がり距離をとると、相手は剣を振り切った状態で静止していた。相手から目を離さずに、急いで立ち上がって構えを取り直す。
その間相手は攻めてこず、立ち上がったこちらを見るとポツリと呟いた。
「ふむ。後も支えているし、5分といわず早々に終わらせようと思っていたが少し計
算が狂ったか。」
一度そこで区切ると、嫌な笑みを浮かべながら宣言してくる。
「さて、どこまで耐えきれるかやってみようじゃないか。」
「あの、お手柔らかに~…。」
控えめに主張したがどうも聞いていなさそうだった。防御を念頭に置いて構えなおせば、正面から突っ込んでくる。
その後2,3撃目までは防げたもののフェイントを混ぜた4撃目に見事引っ掛かり、あえなく俺は撃沈したのだった。
模擬戦終了後、治療を受けたりしていると後半の受験者が発表された。ちなみに治療は回復魔術を使ってもらったので何の支障もなく試験に臨めそうである。魔術ってマジ便利。
ひとまず万全の状態になったので張り出された対戦表を見に行く。確か、俺はリッツ・ゲドーの組の表を確認すればいいんだったか。さて、相手は…
「シュクダイさん、か。勝てるかなー?」
「無理だと思うぜー。俺としては今のうちに降参したほうが身のためだと思うけどな
ー?」
対戦相手の名前を呟けば、同じように表を見ていた集団の中から声が上がる。声を上げて挑発してきたそいつはいづぞや俺に絡んできたチンピラだった。その顔をまじまじと見つめていると
「なんだービビったか?ま、無理もねぇかぁ~ハハハ!」
と笑っている。ありがたいことに俺のことを忘れてくれているらしい。これ幸いと俺はさっさとその場を立ち去った。
この手のタイプは関わらないに限ると俺の少ない人生経験が告げていた。
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