写真
こんな話を聞いた。
高校以来の友人たちと、旅行の際に撮った写真を、メッセージアプリで送り合っていた。四人での旅行だったのもあって、思ったよりも写真が大量にあった。アプリの、一つのアルバムにまとめる機能を使って、各々がそこにアップロードしていく。気づけば、あっという間に二百枚を超えていた。
際限なく増えていく写真を見ながら、グループ通話機能で、あの店の蕎麦が美味しかった、あそこの眺めが良かっただの、旅行の思い出を話す。
最初は特に引っ掛からなかったのだが、途中で気づいた。それぞれが撮ったものだから、当然、見覚えのない写真がいくつもある。だが、明らかに構図がおかしい、まるで隠し撮りのような、誰もカメラを見ていない瞬間や、ブレてボケてる写真がいくつも混じっていた。
「ねえ、誰よ、撮り損ねたのまで入れてるのぉ」
笑いを堪えながら、友人の一人が言う。それに同調して、えー誰ー? 私じゃないけどーといった声が続く。
お互いに違う違うと言い合ってふざけていたが、やがて違和感に気づいた。全員が、自分ではないと言うのだ。そして、その間も少しずつ写真は増えていく。
「なんか、これ…」
先ほどまでの賑やかさが嘘のように、全員が黙り込んでしまった。沈黙。
そして、誰かがぼそりと、呟くように吐き出す。
「…あたし達、全員、写ってない?」
その声に肌が粟立つ。
知らない声だった。
重たい沈黙の中で、スマホ持った手のひらに、じわりと嫌な汗をかくのを感じる。
「だれ……?」
意を決して尋ねた。瞬間、表示されていた写真が一気に削除され消えた。驚いてグループの画面を見ると、誰かが退室したと表示されていた。誰かよく見ようと瞬きをした。
次に目を開いた時には、退室しました、の文字だけが残っていた。
四人の誰でもない。そこにいたのは何者だったのか。今も、何もわからないままだ。
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