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「兎夢よかった。もう話せないかと思ってた。」
「ごめんなさい。あなた誰ですか?」
え…は…俺は動揺するしかなかった。ひとまずなースコールを押し、主治医達に来てもらった。そしてさっきのことを話した。すると主治医は
「これは、事故で脳に強い衝撃を受けたことによる記憶喪失ですね。」
なんで、なんでなんだよ。俺たちがなんかしたっていうのか?
「あの…ここは病院ですか?私なんで病院にいるんですか?」
困惑する彼女に優しく主治医は事情を説明した。
彼女は一応納得したようだった。
「先生、彼女は治るんですか?」
「…」
主治医の様子を見て完治は難しいようだと悟った。
それでも、少しでも彼女といたかった俺はその後も彼女のリハビリに付き合ったりするなどして毎日通った。すると、徐々に心を開いてくれた。
「夏海(かい)さんは恋人とかいないんですか?」
「っ…!あーいやいるんでるけどね、記憶喪失なっちゃって笑」
「あっそうなんですか…なんかごめんなさい」
「あ、いやいいっすよ気にしなくて」
まさかこんな質問されるとは思いもしなかった。それからは兎夢は気まずくなったのか恋愛に関する質問はしなくなった。
しばらくして、記憶は未だに戻りつつないがそれ以外の事故に関する後遺症はなくなったため、俺たちは主治医に許可をもらい出かけることにした。でかけた場所は淡い期待をかけて初デートに行った水族館にすることにした。
そこで俺は彼女の忘れているこれまでの事をすべて話すつもりだ。
当日、今日は久しぶりに病院服以外の彼女の服を見た。
「やっぱり綺麗だ」
そう小言を呟いた。彼女はきょとんとした顔をしていたがあまり気に留めていない様子だったので水族館へ向かった。
くらげの水槽を眺める彼女は絵になるような神秘的な美しさを放っていた。その後もイルカショーを見たりペンギンを見たり…楽しい一日を過ごした。
この時間が終わってほしくないと俺は切実に願う。
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