第33話 エリュシオンとの戦い

レオとカイは、氷獣エリュシオンの圧倒的な冷気と破壊力に立ち向かっていた。エリュシオンは巨大な氷の爪を振り下ろし、地面を凍らせ、鋭い氷の破片を四方八方に飛ばしてくる。


「《フレイムウォール》!」


レオは炎の壁を作り出し、氷の破片を溶かして防御した。しかし、エリュシオンの攻撃は止まらず、次々と新たな氷の魔法を繰り出してくる。


「これじゃ、防戦一方だ……!」


カイも光の矢を放ち続けていたが、氷の鎧に阻まれ、決定打にはならない。


「小僧ども……この程度か!」


エリュシオンの咆哮と共に、氷の大地が盛り上がり、無数の氷柱が二人を狙って伸びてきた。


「避けろ、カイ!」


二人は必死に回避するが、氷の冷気が肌を刺し、動きが鈍っていく。


「このままじゃ……」


エリュシオンは息を吸い込み、口元に冷気を集め始めた。


「まずい、《アイスブレス》が来る!」


レオは急いで手を前に出し、魔力を集中させた。


「《ヒートバリア》!」


炎の障壁が展開され、凍てつく息を遮った。しかし、バリアは次第に薄くなり、亀裂が入り始める。


「くっ……耐えろ……!」


その時、カイが集中して呪文を唱えた。


「《ホーリーレイ》!」


眩い光のビームが放たれ、エリュシオンの顔面に直撃した。


「ぐおおお!」


ブレスが中断され、氷の霧が消え去った。


「今だ、レオ!」


「分かってる!《フレイムインパクト》!」


レオは炎をまとった拳を地面に叩きつけ、火柱をエリュシオンの足元に炸裂させた。


エリュシオンは巨体を揺らし、バランスを崩した。


「追撃するよ、カイ!」


「《ホーリーストーム》!」


カイは光の矢を無数に放ち、エリュシオンの氷の鎧を砕いていく。


「《フレイムバースト》!」


レオは一気に火力を上げ、炎の竜巻を生み出した。


しかし、エリュシオンは苦しみの声を上げながらも、立ち上がり、再び冷気を放ち始めた。


その時、轟音と共に一つの影が氷柱を蹴り飛ばして現れた。


「お前たち、大丈夫か?」


見知らぬ男が立っていた。短髪に鋭い目つき、シンプルな黒い道着を纏い、素手で氷の破片を砕いている。


「誰だ、あんた!?」


レオが警戒心を露わにする中、男は軽く拳を握り締めた。


「俺の名はジン。ただの流れ者だが、どうやら手助けが必要そうだな」


エリュシオンは再び攻撃の態勢に入る。


「手伝ってくれるのか?」


カイが尋ねると、ジンはニヤリと笑った。


「もちろんさ。こいつは一人でやるには少し手強いからな」


ジンは氷の槍が飛んでくるのを見極め、身体を低くして回避した。


「せいっ!」


鋭い正拳突きを繰り出すと、氷の槍は粉々に砕け散った。


「す、素手で氷を!? ただ者じゃないな……」


レオは驚きつつも、エリュシオンへの攻撃を再開した。


「《フレイムストライク》!」


カイも続けて、


「《ホーリーバレット》!」


炎と光の魔法がエリュシオンに直撃するが、まだ倒れない。


「なら、俺も一発行くぜ!」


ジンは地面を強く蹴り、エリュシオンの足元へと飛び込んだ。


「これで終わりだ、ハァッ!」


彼の拳が氷の鎧の隙間に突き刺さり、エリュシオンの動きが一瞬止まった。


「今だ、レオ!」


「《フレイムバースト》!」


炎の竜巻がエリュシオンを包み込み、氷の身体が音を立てて崩れていく。


「ぐおおおお!」


エリュシオンは断末魔の叫びを上げ、氷の身体が砕け散った。


「や、やった……!」


カイは息を切らしながら言った。


「うん、でも油断しないで。まだ何かが……」


その時、エリュシオンの残骸の中から、黒い霧がゆっくりと立ち上がった。


「これは……虚無の力!?」


レオ、カイ、ジンは再び構えを取り、新たな戦いへの準備を始めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る