第21話 ヴァルス城にて
ヴァルスの死と共に、虚無の力で覆われていた城の周囲は徐々に霧が晴れ、光が差し込み始めた。黒く淀んでいた空は青を取り戻し、冷たく重い空気は暖かさを帯びた風へと変わっていく。
ヴァルスと戦ったあの日、レオは眠りにつき夢の中でヴァルスの死とグレイが生きていることを知りヴァルスの城があるという土地に足を踏み入れた。
ヴァルスが死んでから虚無の軍団は姿を見せなくなったので、レオはスムーズに城に向かうことができた。
レオは、瓦礫と化したヴァルス城の跡地に足を踏み入れた。崩れ落ちた石壁、倒れた兵士たち、そして虚無の呪いから解放された人々が深い眠りについていた。彼らはまるで、長い悪夢から目覚める瞬間を待っているかのようだった。
「村長…」
レオは辺りを見回し、村長グレイの姿を探した。虚無に引き込まれた彼がここに戻っている可能性を信じ、瓦礫を掻き分け、廃墟の中を歩いた。しかし、見つかるのは知らない人々ばかりで、グレイの姿はどこにもなかった。
やがて、崩れた城壁の近くに、一際奇妙な光を放つ岩が目に入った。レオは近づき、岩の表面を覗き込んだ。そこには、古代の魔法文字が光の紋章として刻まれていた。
「……これは、村長の光の魔法?」
彼は岩に触れると、微かに暖かい光が彼の指先を包んだ。光は脈打つように輝き、まるでメッセージを伝えようとしているかのようだった。
岩に刻まれた文字は、光の粒子が集まり、ゆっくりと浮かび上がった。
「アクアリウス……海底城……私の息子に伝えてくれ……」
レオは息を飲んだ。
「村長の息子が、海底城に……?」
彼の脳裏に、村長の穏やかな笑顔と、村を守るために戦っていた彼の勇姿が浮かんだ。
「村長、まだ生きてるのかもしれない……!」
レオは希望を胸に、瓦礫の中で見つけた手がかりを握りしめた。岩に刻まれた紋章は、まるで彼に次の道を示しているようだった。
「海底城アクアリウス……そこで、村長の息子に出会えるかもしれない。きっと、光の力を受け継いでいるはずだ……」
レオは静かに立ち上がり、瓦礫の中で目覚め始める人々を見つめた。
彼らを守り、導く者として、彼は新たな使命を胸に誓った。
「待ってろ、村長……そして、アクアリウス……僕は必ず、あなたの意思を繋ぐ!」
レオは背を向け、ゆっくりと歩き出した。彼の背中には、本が静かに光を放ち、新たな冒険のページを開こうとしていた。
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