第24話

「大丈夫?」

 カズが心配そうにのぞき込んでくる。

 私は黙ってうなずいた。


 それよりも先に死後認知と、自称婚約者の心配をしなくてはならない。

 死語認知をネットで検索すると、けっこう難しいらしいことがわかった。彼の言う通り、弁護士を入れた方が早いみたいだ。


 自称婚約者に慰謝料を請求されそうだ、とカズに相談したら、向こうの出方を見てから弁護士を入れよう、と言われた。

 DNA鑑定も検索した。会社によって価格が大きく違っていて驚いた。日数は、最短四日でわかるとうたっている会社もあった。

 死後認知のためだけじゃなくて、最悪は自称婚約者にもそれを頼まなくてはならない。


「見て見て!」

 急に彼のうれしそうな声がした。

「一円玉、浮かせられたよ!」

 彼は胸の前に両手を上げていた。


 その中間に、一円玉がふよふよと浮いている。

 私は慌ててひったくった。


「どこから出したのよ!」

 小声でつっこみを入れる。

「そこに落ちてた。今の、有名な映画のワンシーンみたいじゃなかった?」

「知らない、見たことないから」

「そんな! 寝ずに練習したのに」

 彼はショックを受けた顔をした。


「幽霊なんだから寝ないでしょ」

「そうだけどさ」

 彼はふてくされた。


 まったく、もう少し状況を考えてほしい。今は会社なんだから。

 彼だって私以外のことを考えた方がいいんじゃないのかな。


 あ、と私はようやく気が付いた。

 彼のお葬式、どうなってるんだろう。

 恋人ではあるけど、彼の家族にも紹介されていない。婚約者がいるなら私がお葬式に行くと場が混乱してしまうかもしれない。


 私はため息をついた。

 仕事に集中できなくて、ミスを連発してしまった。

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