第25話
終業間際、江上さんに小会議室に呼ばれた。
病院のことを聞かれるのだろう。
私は不安を隠し、平静を装って小会議室に入った。
当然のようにカズは憑いてきた。
席につくと、すぐに江上さんは切り出した。
「病院、どうでしたか?」
「すぐには診てもらえなくて。予約を入れたので一か月後になります」
「今日も調子悪そうでしたが、大丈夫ですか?」
「一応、大丈夫です」
妊娠も言わないといけないよね。
これから体調はどんどん変わるだろうし、見た目でもわかるようになる。休むことが増えるかもしれない。
だけど、言いづらい。だいぶ変わったとはいえ、今も世間の未婚の母には風当りは強いだろう。
「男と密室で二人っきりってのが気に入らない」
ぶつぶつとカズが文句を言う。
あいかわらずの様子に、私は思わずふふっと笑った。
「どうしました?」
「ちょっと思い出し笑いを」
私は慌ててごまかした。
だけど、江上さんは難しい顔で私を見る。
「私はそんなに信用できませんか?」
私は驚いて彼を見た。
「信用してます」
「ですが、本当のことを話してくれていませんよね?」
見抜かれていて、私はまた驚いた。
でも、本当のことなんて言えない。彼が幽霊になってここにいるなんて。
「私はあなたの力になりたいと思っています。話してもらえませんか?」
どうしよう。
私はうつむいた。
妊娠のことは話したほうがいいのだろうけど。
「ここで話がしづらいようでしたら、仕事が終わってから、ゆっくりできるところで話しませんか? お酒でも飲みながら」
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