第4話 贈り人2
この娘といっしょにいるとまるで心が浄化され、現世に戻すという仕事のことなど忘れてしまう。
りんかと出会って今日で4日。少女の体は少しずつ薄くなっていっており、後ろの景色が透けて見え始めている。
はやく現世に送り返さなければ。
そう思っていはいるものの、りんかといると今までに感じたことがないような幸福感に満ちていく。
あと少し、あと少しだけ、、、
「私のお母さんとお父さんはどこにいるの?」
思いふけていると、突然りんかが言い放つ。
そうか。この子は現世で今、意識が戻らない状態にあるのだった。
「帰りたいかい?」
無意識のうちに口に出してしまったことに後悔する。
もし帰りたいといったら私は無事にこの娘を送り返すことができるのだろうか。
「いいえ、帰りたくないわ。ただお母さんとお父さんに会いたいだけ」
そうか。私は当たり前なことに今更気づく。
この娘には愛すべき人がいて、同時にこのこを愛している人がいるのだ。
「目覚めたいかい?」
私はささやくように少女に語りかける。
「ねむ、たい」
少女は目をとろんとさせながら言う。
その言葉で私は覚悟を決めた。このこを今から現世に送り返すことを。
私はいつか送り返すときに渡そうと思っていた、小さな犬のぬいぐるみを引き出しから取り出すと少女の手のひらに置く。
「これはりんかが良い目覚めをおくれるようにするためのおまもり」
そして、これが私からのメッセージ。
どうか、気づいて。
「ふざきさま!」
段々と光に包みこまれていく少女にむかって手を振る。
少女は手を伸ばすが、それはどこにも届かなかった。
「またね」
私がそう呟くと同時に少女は消えていった。
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