第4話 受け取り人(おまけ)

 羽咲様はいつも手紙を書いていた。

 だけど私が来ると手を止めて手を広げてくれたな。

 でも誰に手紙を書いていたのだろう。


「ふざきさま、、、」


 りんかは小さな犬のぬいぐるみを見つめながらつぶやく。

 最近は病状も安定しており、上半身は自由に動かせるほどに回復していた。

 私はふと羽咲様が私を目覚めさせて暮れたときのことを思い出す。


『これがあったらまたいつでも会えるよ』


 そんな事を言ってこのぬいぐるみをくれた。

 どうやったらまた会えるの?りんかがそう思うと同時にひとつの仮説が思い浮かぶ。


「もしかして、、、」


 りんかは慌てて起き上がるとベットの横にある棚からペンを取り出す。

 ぬいぐるみを思いっきり握ると何かの感触があった。


 もしかしたら本当に、、、


 覚悟を決めると、ぬいぐるみに向かって思いっきりペンを振り落とす。


 グサッ


 ぬいぐるみは思っていたよりも簡単にその中身を現した。

 中から溢れてくる綿を出していくと、何かが指先に触れる。

 それは折りたたまれた紙切れだった。


「あぁ、、、」


紙切れを開き、手紙に目を通す。


『りんかへ


 あなたと過ごした日々は今まで感じたことがないほどに、幸せでした。

 そしてそれはこれからも。

 次は、あなたが幸せを作っていくのです。大丈夫。それはもう目の前にあるから。

 これで、いつかあなたとした約束は果たせました。覚えてくれていたら、嬉しいです。

 夜、夢の中でまた会いましょう。会いたいと願えば、いつでも会いに行きます。


              羽咲より』


「約束、、、?」


 全てに気づいたときには、目に大粒の涙が溜まっていた。


 あぁ、そうだったのか。


 約束、、、守ってくれてたんだ。

 覚えて、くれてたんだ。



 神様はほんとうにいたんだ。

 


「ありがとう、羽咲様!」


 私の神様。

 そして、約束したお隣さん。

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