第2話

ミラさんについて歩いていくとずっと続いていた水溜りが途切れる部分が現れた。

「こっちよ。ここに立てば別の部屋に行けるわ」

僕が訝しんでいるとミラさんはそう言って僕の手を引いた。

「うわっ!?」

突然のことに僕は転びそうになりながらもなんとか踏みとどまる。

「ちょっと、危ないですよ…」

抗議の声を上げようと顔を上げた次の瞬間には周囲の景色が一変していた。先ほどとは違いここは室内であるようだった。目の前にはテーブルと椅子が置いてあり、テーブルの上にはカップに入った飲み物とクッキーが置いてある。僕が声も出せないでいるとミラさんは僕に椅子に座る様に促す。

「それじゃあさっきの続きかしらね…」

ミラさんはそう言って続けようとするが僕には先に聞きたいことがあった。

「ま、待ってください!さっきは…その…どうやってここに来たんですか?」

「さっきのは各空間を繋いでいるゲートみたいなものね。それぞれの空間には必ずあるけど各空間の管理者の許可がないとどことも繋がらないようになっているわ。まあ今回は私の権限であなたを許可した感じかしら」

「そうですか…」

正直何が何だかだが、僕は一先ず彼女に肯定を返す。ここまで何となくついてきてしまったが僕は自分のことすらまともにわからないでいる。さっきの“力を渡す”ことだって全然わからない。このまま彼女の雰囲気に流されて頷き続けたら取り返しのつかない事態になるような気がした。

「じゃあ話を続けるわよ」

「はい」

「先ずは…こうやって話せているから大丈夫だとは思うけれど物事を判断するベースの知識は持っている?」

ミラはそう言った後に続けて「これはわかる?」と言って机の上のクッキーを指す。改めて聞かれるとなんだか不安になってしまうが…

「…クッキーです」

「大丈夫そうね」

大丈夫なようだ。ミラさんもどこか少しほっとした様子が窺える。

「あなたは大丈夫だったけど、果たす役割によっては空っぽで生まれることもままあるのよね」

僕はその言葉に冷やりとする。知識すらない場合はどうなるのだろうか。

「その場合はどうなるんですか?」

「そういう場合はその状態が望ましくて空だからそのまま何処かに配属になるわ」

「…」

「まあ、あなたは今の知識の状態で大丈夫よ。それと今から、あなたの役目について詳しく話していくんだけど…ちょっと疲れたでしょうし一旦休みましょうか。私は少し外すからその間机の上のものは好きにしていいわよ」

ミラさんはそういうとここに来た時に立っていた場所からどこかへ消えてしまった。

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