能力斡旋所
@hasuu
第1話
それが起きたのは自然の摂理によるものであった。それは幾度となく行われてきた作業であった。今日もまた新たな存在が生み出され、使命のために行動を起こす。
音が聞こえる。さざ波の音が耳に心地よく、そのまま意識を浸していたい気持ちにかられる。今はその心地よさに身を任せることにした。いくらかそうしていると今度は別の音が聞こえてくる。“ちゃぷちゃぷ”と水面を揺らす。これは足音だろうか。邪魔が入ってしまったことによる残念さを思いながらもここまで閉じていた瞼を開ける。そこは浅い水溜りが際限なく広がっているようだった。それ以外は透き通るような光に包まれていた。どこを見渡しても同じ景色が広がっている中、先程の音の正体らしき人物を捉える。彼女…いや、その中性的な見た目からは性別が判断できなかった。彼女もしくは彼がこちらへ話しかける。
「やあ、目覚めの気分はどうだい?」
「どういう事ですか?」
「そのままの意味さ。君はたった今生み出された存在だからね。君の存在含め、今から説明しようと思うのだけれど大丈夫かい?」
「はい、大丈夫ですけど」
突然の話に訳が分からなくなる。兎に角状況を整理しようとして、自身のことが何も記憶にないことがわかる。周りの景色から見てもこの人の話を聞くしかないのだと感じる。
「君は生み出された存在であるといったけれど、これは君だけに限らない。私もそうだしこの空間を創造したのもそのお方によるものさ」
「お方ってどの様な人なんですか?」
「私たちに許された呼び名はないけど、あらゆるものを想像しておられるわ。そして私たちは作られた世界の管理を一部任されているの。他には何かある?」
「あの…」
「?どうしたの。何でも言ってみて」
「あなたの名前を教えてもらえませんか?」
少し緊張して、僕がそういうと目の前の人物はキョトンとした後おかしなものでも見たように笑ってそういった。
「ミラ。それが私の名よ」
「ミラさんですね。ミラさん僕はこの先どうすればいいんですか?」
「あなたには一度死んで新たな生を得る前の存在にそれらが次の生で生き抜くための力を渡してほしいの」
「力…僕にそんな事ができるんですか?」
「力自体はこちらが用意するから安心して。あなたにしてもらうのは次の生を得る前の存在と意思疎通を交わしてその存在に見合う範囲で望む力を考えて貰う事よ。そして…」
ミラさんはそこで一旦区切って、どこからか青い球体を取り出す。
「この球を使ってあなたがイメージした力をそれらに渡せばいいわ」
一言断って、青い球体を手に取る。軽い。手に乗せている感覚すら怪しくなる程に。
「何でできているんですか?とても軽いんですけど…」
「さあね。」
「さあねって…」
「それはあのお方が作られたものよ。だから分からないわ。ただし、それはあなたのイメージがとても影響を与えるらしいわ」
そういうと彼女は「続きは別の場所でしましょう」そう言って微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます