部員を集めよう2
「コイツが健太」
と部長が紹介すると、
「……新素材工学一年、鈴木健太です」
真新しいうちの制服を着てヒョロっとした感じの黒マッシュ髪の男子が、眠たそうに言って、ぺこりと頭を下げた。
「んで、コイツがタイヘイヨウ、略してタイヘイ……本名なんだっけ?」
「機械工学専攻三年、
俺も挨拶を返した。やっと俺にも後輩が出来た。
「あと、幽霊部員が二人で部員は全部だ」
最低部員数の五人のうち二人が幽霊部員って、ほんとどうなんだと思ったが今更だ。
「……で、何する部?」
と新入部員が聞いてきた。
「先輩、説明しなかったんっすか?」
俺が部長に聞くと、部長は渋い顔で、
「鹿角五本で手を打ってもらった」
まさかの買収だった。何やってんだよ、あんたはー! えっ、鹿の角? なんであんた五本も持ってたんだ?
「……角切らしてたから」
あれ、角って切らすようなものなの? 俺の知らない何かの流行?
「そうだ。こないだの話。タイヘイ、お前本物の魔法見たことが無かったんだよな。今から見せて貰うか?」
えっ、どういう話の流れ? 意味不明なんすけど?
「……杖持って来てない」
「あっ、そうか学業に無関係な物の持ち込み禁止だったな」
今思い出した、と頭を搔きながら部長が言った。
「でもこれからは、部活の道具として問題なく持ち込めるから、安心しろ」
「どう言おうと『玩具』は、駄目だと俺は思うんっすけど?」
「本物だから!」「……本物だから!」
あれ? 俺が少数派なの?
「じゃ、明日実演ということで。魔法、何にする?」
「……やっぱり、水。プールでやれば、問題起きない」
「それもそうだな。それで行くか。プールの使用許可取っとくわ」
何この会話? 魔法あるの当然ってことなの? きっと手品のことだよな。この厨二病どもが。
「タネが分からないっす……もう一回、もう一回頼むっす」
翌日学内の50mプールで、俺はどうしてもタネの分からない手品を延々見せ続けられた。健太の持つ30cmぐらいの棒の先の空中に、直径2mの水球が現れてはプールに落下し続けるというやつだった。ポンプもチューブもどこにも無いから『水芸』じゃないし、どうなってんだ! プロジェクションなんかじゃないし……。
うちの部は製作系で、奇術部じゃ無かったよな。うちの部どうなってくの?
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