うちの部活が、最近どーもおかしい

青銅正人

部員を集めよう1

「もう五月か、新入部員が入らないと、50年続いたわが部は私の代で廃部だ。困った」

山本部長が部室の机に腰掛けて、偉そうな感じで腕を組んで言った。

「やっぱり、勧誘ポスターが、まずかったんじゃないっすか?」

壁に貼られたポスターを見ながら、俺は誰が考えてもそれしか無い理由を告げた。


 ポスターには、「『十分に進歩した科学技術は、魔法と見分けがつかない』部」と、今時のラノベのタイトルのように長い、部活の名前が書いてあった。有名なA.C.クラークの第三法則だそうだ。部活を立ち上げた大先輩は、きっとSF愛好者だったんだろう。

 部活名を見ただけでも、普通の生徒は十分引くと思う。まあ、うちの学校は高専だから、逆に惹かれる奴もいるかもとは思う。クラークのファンとかもね。


 だが問題なのは、その下に書いてある活動内容だ。

「未知のエネルギーの利用法を考えよう」

かなりヤバいが、百歩譲ってこれはまあ良い。代替エネルギー開発関連と思ってくれるかもしれないから。しかしその下の、

「魔法の杖を君も作ってみないか」

これはあかんでしょ。怪しさどころか、どこの厨二病。


 フレーズを指差しながら、聞いてみた。

「先輩、何考えてこんなフレーズ入れたんすか? 俺の入学んときは、確か『自動運転車を作ってみないか』だったっすよ」

「あー当時流行っていたからな。これは俺の人生の目標を、そのまま書いた」

「マジでぇ、その歳でまだ厨二やってんっすか?」

部長は高専の五年、もう直ぐ二十歳だ。

「いや、現実の話だ」

「現実に魔法? あんた正気っすか?」

「失礼な奴だな。どこに正気を疑われる要素があるんだ?」

部長は首を傾げた。あれ? 俺がおかしいの?


「ああ、そうか。タイヘイは本物を見たことが無いのか」

部長は今気がついたと言うように、右手の拳で左の手のひらをポンと叩いた。

 えっ、何が言いたいんだこの人、魔法に本物もクソも無いだろ、全部想像の産物でしょうが。


「そうか、健太を引込めば良いんだ」

急に話が元に戻ったらしい。

「誰っすか、それ」

「新素材工学の一年。私の幼馴染だ」

「なんだ当てがあるなら、初めから一本釣り勧誘すれば、良かったじゃないっすか」

「いやぁ、あいつをうちの部に入れると、色々常識が崩壊しかねんと思っていたんだが。魔法OKなら、初めから気にすることなかったな。うん」

部長は机の上で相変わらず、偉そうに頷いていた。


 あれ? 何か増々厨二なこと言ってないか? 俺は、ちょっと不安になってきた。うちの部、これで大丈夫なのか?

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