第7話 元番長


 今日はカズマの停学明けの日だ


 まさか1週間の停学になるとは思わないじゃん?


 これじゃ何のために体育館裏に行ったのかわからない。


 運が悪かった、そういうことにしておこう。


 教室に入ると、皆がなんかザワついている。


 どうしたんだ〜い?


 まさか停学明け早々元番長が殴り込みにでも来たのか〜い?



 すると白鳥琴音が俺に気が付き近寄って来た。


 「山田君!大変です!元番長の荒岩先輩が殴り込みに来てます!」


 来てますじゃないよ。 それを俺に報告すな。



「あと、カズマはまだ入院中で学校に来てなくて、、」


 それは俺が悪い。




「貴様がカズマの連れか? ちょっと面を貸せ!」


 おお? なぜ俺に。


 白鳥琴音が両手ガッツをしてこっちを見てニコニコしている。


 このアマ、、



 俺達2人は体育館裏に来た。


「貴様、春夫君を知っているな?」


「いいえ、知りません、犬の名前か何かですか?」



「春夫君が言っていた、この学校の制服を着た坊ちゃん刈りのメガネのチビにやられたとな」


「そうですか、そんな人たくさん居ると思いますけど」


「そんなヤツはこの世界に貴様しかおらんわ!」


 言い過ぎだろそれは。


「今のは言い過ぎた」


 反省はや。



「それで、僕にいったい何の用ですか」


「俺と勝負しろ!」


 なぜそうなる。 こいつアレか? 拳でしか語り合えないタイプか?


「俺は拳でしか語り合えん」


 そのタイプだったわ。


「いざ!参る!」




 元番長が拳を突き出し俺に殴りかかって来た、俺はこの時スライムの能力で周りの景色がゆっくりと見えていた。


 元番長の攻撃を何度か躱す、ここで春夫の二の舞いはゴメンだ。


 これは慎重に行動せねばならん、元番長の身体に触れればまた何が起こるか知れたもんじゃない。



 ここで、番長の動きが止まった。


「素晴らしい、、、感動した、、!」


 はい? いったい何を言っているんだ?


「その身のこなし、いったいどれだけの鍛錬を積んだのか、そしてそれだけの力量があるにもかかわらず、毅然とした態度で一切手を出さない、その心意気に惚れた!俺を!舎弟にしてください!」


「嫌です(なに言ってんのこの子)」


「兄貴!そこをなんとか!」


 誰が兄貴だ、年上だろお前。


「あのですね、、僕目立ちたくないんで、そういうのはちょっと困るというか」


「友達からでも良いんで!お願いします!」


 告白か。


「じゃあ友達って事でいいので、そっとしといてください」


「あ!ありがとうございます!兄貴!」


 兄貴やめい。



「兄貴とかじゃなくて太郎って呼んでください、お願いします」


「太郎の、、兄貴、、」


 だからやめろや。



「じゃあ太郎君って呼んでください、たしか春夫君って呼んでましたよね? そんな感じで」


 元番長は涙を流し、目を輝かせながら叫んだ。


「太郎くんっ!!」


 うるせえな。

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