第4話

 京都河原町駅から、地上に出た。

 そして、キヨテルは、ミツキとテクテク歩いていた。

「京都って、建物の外観が、黒いね」

「吉野家とか吉野家とかローソンの景観が、独特だね」

「歴史の雰囲気を壊さないためだろう」

 と言った。

 京都市営バスが、走っている。

 緑色のバスである。

 外国人が、英語で話をしている。

 そして、何か写真を撮っている。

 京都河原町駅から三条大橋まで歩いてきた。

「ここさ」

「うん」

「江戸時代は、東海道五十三次の始まりの京都三条大橋なんだぜ」

 とキヨテルは、自信ありげに言った。

「でも、何にも面影がないじゃん」

「そうだなぁ」

 と思った。鴨川のほとりでは、中学生の男子たちが、ジャージ姿で走っている。

 または、何か、外出している幼稚園児たちが、先生と一緒に歌っている。

 少し行ったところに、『東海道中膝栗毛』の弥二さん喜多さんの石碑があった。

「弥二さん喜多さんの時代は、江戸の日本橋から、箱根を渡って、それで、伊勢そして京都まで来るのは、命懸けだったんだぜ」

「私も読んだことがあるけど、時代が、もう違うじゃない」

「まあ、そうだけど」

 と、思っていた。

「今なら2時間で、京都から東京まで新幹線で行くことができるよ」

 とミツキは、言った。

 確かに、十返舎一九『東海道中膝栗毛』のようなロマンティックな旅愁を誘う雰囲気は、もう、2025年にはなかった。

 今なら、スマホのテレビ電話で、顔まで映っている。

 そしたら、今まであったアナログテレビは、何だったのだろうか?

 そう思った。

 ミツキは、平成生まれの女性だが、キヨテルは、昭和の終わりに生まれている。そして、好きな女子の家に電話する時は、お母さんやどうかしたらお父さんが出てきて、困ったこともあった。

 ただ、去年だったら、NHK大河ドラマ『光る君へ』で、『源氏物語』の作者の紫式部の話が、ドラマになった。

 そして、二人は、三条大橋から緑色の京都市営バスに乗った。

 そのまま、色んな神社仏閣を回った。

 平安神宮へまずは、向かった。

 そして、平安神宮で、キヨテルとミツキは、丼屋へ入った。

「いらっしゃいませ」

 と大将は、言った。

 そして、女将さんに誘導されて、ミツキとキヨテルは、お品書きを見た。

「よし、決まった」

 と二人とも、口を合わせて言った。

「女将さん!」

「はい」

 と言った。

「僕は、マグロ丼を一つ」

 と言った。

 その時、女将さんは

「奥様は、何にしますか?」

 と言った。

「いや、私、妻ではないのですが」

「いや、仲良い夫婦連れに見えたのですが」

「じゃあ、私も、マグロ丼一つ」

 と言った。

 夫婦連れなんて言われて、キヨテルもミツキもびっくりした。それは、何かの映画かドラマ、マンガのような世界と思っていたが、そうではなかった。

 15分が、経過した後、女将さんは、マグロ丼を二つ持ってきて、唐揚げも一皿ついていた。

「あの」

「はい」

「私たち、唐揚げを頼んでいないのですが」

「それは、おまけだよ」

 と言った。

 良い丼屋さんだったと思う。

 京都市内だから、飲食店は高いと思ったら、そうではなかった。

 そして、二人でブラブラしていた。

 今度は、平安神宮から、八坂神社へ向かった。

 キヨテルとミツキは、普段は、大阪にいることが、多いが、京都市内は、あまり地理が不案内だから、二人は、ギュッと手を握り合った。

 そして、キヨテルは、その時、感じた。

 大阪に住み始めた時、衝動的に、新幹線で東京へ帰ったが、もう、みんな、自分の仕事に忙しくて、会えなかった。

 そして、今の職場からの帰り道、近所の図書館で読書サークルが、あって、そこで、趣味を見つけて、ミツキと会った。付き合いが始まった。お互いが読書の感想を述べるだけではなく、箕面方面へツツジを見にハイキングへ行き、そして、三重県の青山町まで紅葉を観に、近鉄電車で大阪から出かけたこともあった。

 更に、ミツキのクルマの運転が得意な男の友達やら女の友達と4人で、福井県までスキーに行ったこともあった。

 また、梅田のゲームセンターで、電車のゲームもしてみた。

 そうだよなぁ、と思った。

 ミツキと出会ってから、福井県までスキーに行き、そして、大阪の梅田でゲームセンターへ行き、紅葉やらツツジを見て、ハイキングをしていた。

 そして、八坂神社から、帰ろうとした。

 阪急京都本線の京都河原町駅に着いた。

 その時だった。

 改札口で、ミツキにぶつかった男性が

「おい!コラ!」

 と怒った。

 この時だった。

 今まで、キヨテルは、こみ上げたことのない怒りが出てきた。

「何、女に、文句を言っているんじゃ!」

 と怒った。

 昔、付き合っていた女性を守れないことを、ずっと悔やんでいた。

 そして、その白髪交じりの男は、「ごめんなさい」と言って、すぐその場から離れた。

 駅員さんが

「大丈夫ですか?警察呼びましょうか?」

 と言ったが

「良いです」と言った。

 その時、ミツキは、怯えた顔だったが、「ごめんね」とキヨテルに謝った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る