致死量のミルク
『貴方へ、今年も私からチョコレートを贈ります』
正しい事をしなくてはいけない。悪い事は許されるべきではない。だからあの子の間違いは全て私が正してあげる。正しくなるにはバツを与えなくっちゃ。だってそうじゃなきゃ、反省なんてしないでしょ。
私の言っている事に間違いがある?ないわよね。だったら私の言う通りにしなさい。だってそれが正しいのだから。
私が想う貴方は正しい人間であるべきなのよ。
あの子は本当は優しい子なの。繊細なの。人間誰でも間違う事はあるでしょう。あの子はそれが多いだけ。だから許して欲しいの。だってあの子が傷付く所なんて見たくないもの。人同士が傷つけ合うなんておかしいじゃない。あの子の事を知ってあげてよ。どうしてそんな酷い事をするの?どうしてそんな酷い目に遭わせるの。可哀想じゃない。許してあげてよ。止めて。お願い。私が苦しい。止めて。止めて。
何があっても私だけは貴方を見捨てない。
私はあの子を知っている。私はあの子を想っている。だから分かるの。
あの子は自分を知らないの。気付いていないの。出来ないのは努力していないだけ。怠けているだけ。あの子には才能があるのだから、絶対出来る筈なのよ。やらない理由になんてないわ。大丈夫、私が伸ばしてあげる。私が導いてあげる。だから私を見て。私の声を聞いて。
貴方は他へ目を向けなくていい。
あの子は駄目な子なのよ。失敗ばかり。何も出来ない。だから私が助けてあげないといけない。何でもしてあげなくっちゃいけない。
……本当に駄目な人間。ロクデナシ。欠陥品。だから愛しい。可愛い。いっそそのままでいて欲しい。自分がどうしようもない人間だと知って、苦しんで欲しい。泣いて欲しい。傷付いて欲しい。世界中から嫌われて欲しい。そうしたら誰の所にもいけないでしょう?何でもしてあげられる私の傍から離れないでしょう。
貴方を許すのは私だけ。
どうしてあの子は私の言う事を聞かないのかしら。どうしてあの子は私から離れて行こうとするのかしら。私はこんなに想っているのに。私は貴方に尽くしたのに。
貴方は間違っている。だから教えてあげたのに、私の正しさを知ろうとしない。
まぁ、良いわ。いつかは気付くでしょう。そうじゃないなら不幸になって一生苦しめばいい。
私の言う事を聞かない貴方は要らない。
『私は貴方を愛しているわ、本当よ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます