ルビーレッドなんて嫌い
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。
大っ嫌い。
クラスが同じで席も近かったから、何となく話すようになった。趣味が近かったので休日遊ぶようになった。
だから友達だと思っていた。向こうも同じように言っていた筈だ。
一緒に遊んだ時間は楽しかった。あっちだって笑っていた。
なのに。
ある日ちょっとした喧嘩になった。気まずいまま別れて、でも次の日には挨拶をして、その後はいつも通りに喋った。
だから大した事ではなかったんだと思っていた。共通の友達から話を聞くまでは。
別のグループで酷く悪口を言われていた。そもそも元から好かれていなかったらしい。
信じたくなかったけれど、確かに遊んでいて変な間が出来る事はあった。会話にトゲを感じる時もあった。明らかにこっちが悪くて迷惑をかけた日もあった。喧嘩でこちらから謝らなかった、それも事実だ。
でもそれを言ったら向こうが悪い場面だってあった。喧嘩にしたってこちらが一方的に悪かったとは思っていないし、向こうから謝罪されてもいない。だからお互い様の筈だ。
会話を人によって変える事はあるし、仲が良くても空気が悪くなる時はある。良くないけれど他人に合わせて悪口を言ってしまうのもある。
嫌な話を伝えて来る子とあの子のどっちが正しくて、信じるべきなのか。
こんな事考えたくなかった、知りたくなかった。聞いてしまったせいで気になって仕方がない。
いっそなかった事にしたい、そんな気持ちもあった。
けれども結果はこちらにやって来る。
あの子に話してしまった事。友達だと思っているなら絶対に起きない筈の事。
D君。学校と学年、趣味が同じ。遊びに行ったり途中まで帰宅したり、一緒に居て楽しいし話が合う。だから気になっていた。
向こうがどう思っているか分からないけれど、付き合っている相手は居ないと言っていたし嫌われている訳ではないと思う。
だから悩んだけれど、バレンタインにはチョコレートを渡して告白してみようと考えた。そして決意した。
あの子は悩みを聞いてくれた。笑って応援してくれた。いつ告白したらいいか、アドバイスだってしてくれた。
『大して可愛くもないのに、Dが好きとか笑えるって』
『先に告白してオッケーされたらウケるよね?って』
性質の悪い冗談だろう。
仮に嫌われているのだとしても、そんな事をする人間いていい訳がない。
有り得ない。だからきっと嘘だ。
胸が苦しい。お腹が痛い。恐い。
何かに引っ張られるように、D君がいる筈の場所へ向かう。
放課後の下駄箱。部活が終わって帰り支度を済ませると大体この位になるんだと知っている。
ここの下駄箱は人が少なくて。
だから。
だから、
だか、ら、
『部活帰りが一緒なんだから、その時に渡したら良いじゃん』
『Dの帰り時間なら私も行けるしって。Dって顔良いし、まぁまぁ良くない?って』
『上手く行ったら教えてよ』
『上手く行っちゃったらモテるコツでも教えてあげよっかなって』
覗き込んだ、棚の向こう。
知っている声。D君の顔。
知っている背中。ハートの赤いパッケージにピンク色のチョコ。
あんなに分かりやすいデザイン、あるだろうか。
ああ、本当なんだ。
嫌われてたんだ。友達だなんて思われてなかった。
目の前が赤くなるとは、こういう事なんだ。
お前なんて大っ嫌いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます