第1話極寒の牢獄


ここは極寒の大地、冬の厳しさが血潮をも凍らせるかの如く、容赦なく時を刻んでいた。

祖先たちが歩んできた栄光の道も、時代の荒波がその輝きを今奪い去ろうとしている。

「点呼の時間だ」

看守が囚人をたたき起こす、極寒の寒さの中彼らはその黒い脚で懸命に日が昇らぬ場に出ていく、朝礼の時間である。

整列が終わると彼らは自らの罪状について述べていく

「次のもの」看守が叫ぶ

「576番、国家反逆及び民衆に対する罪により死刑 アレクセイ・ヴァシリエヴィチ」


 彼は王太子、もう彼の国はない、死刑を待つただの囚人である。

乱の嵐が王国を襲ったその日帝政は崩壊した。

アレクセイは容赦なく捕らえられ、凍てつく牢獄へと送られた。反乱軍が設けた収容所は、荒涼たる雪原の中にひっそりと佇み、まるで人の命さえも凍り付かせるかのような冷気に満ちていた。

アレクセイは、氷塊の如く固まった大地を掘り、雪と氷に閉ざされた労働場で無情の労働に従事させられた。

腐ったパンと雑草のスープを一日2回食す、彼には法による守護もない、ただの罪人であり血の代償しかアレクセイには求められていないのだ。


  そんな日々の中、ある寒風吹きすさぶ朝、収容所の中庭において、反乱軍の厳格なる指揮官が、低く響く声で捕虜たちに宣告した。

「お前らが誇る血の系譜は、もはや過去の幻影にすぎぬ。今日より、お前の労働は新しき秩序の礎とならん。お前の苦痛こそ、我らの未来を築く血潮となるのだ!」


その言葉は凍てつく風に乗って、まるで宿命を刻む鐘の音のごとく響いた。

それからの日々は、苛烈な労働と絶望の連続であった。雪と氷に揉まれ、体は次第に蝕まれていく中で、彼は処刑日を迎えた。

歴史の荒波に抗うその姿は、まるで朽ち果てる樹木の根にしっかりと刻まれた刻印のようであった。

運命の暁は、ある薄曇りの冬朝に訪れた。収容所の門を出ると、広大な広場に無数の兵士が整然と並び、彼らの銃口は凍てつく大地に冷たく輝いていた。

捕われたままのアレクセイは、重い鉄鎖に縛られ、無力な姿でその広場へと引きずられていく。

厳粛な面持ちで、そして一層冷徹な声で宣告がされた。

  「逃れることなど、天地の摂理に背くこと。お前の苦悶は終焉を迎え、これより新たな時代の始まりとなる。王家の誇りを捧げるがよい、これが我らの革命である!」


 するとアレクセイは思い口を開く

「革命という短絡的なヒューマニズムに頼るしかない貴殿達の幸運を祈ろう」

「負け犬の遠吠えか!」

反乱軍の将兵は子犬を小馬鹿にするかのごとく嘲笑う。

アレクセイは、かつての栄光を彷彿とさせる瞳を、最後の瞬間まで大地に向け、そして、かすかな声にて呟いた。


「腹が食い破られないように祈っているよ」

  その言葉は、厳寒の空気の中に溶け込み、風に運ばれて遠く彼方へと消えていった。王子の血は、冷たい雪原に静かに染み込み、彼の存在は歴史の一頁として、永劫に刻まれることとなった。


この哀れなる運命は、ただ一人の王子に留まらず、かつて栄華を誇った王家の栄光と悲哀、そして新しき時代の冷酷な決断を如実に示すものであったはずだった……



筆者コメント

読んで頂きありがとうございました。

まだまだ未熟ですが、頑張って作成してまいります!

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粛清王子の異世界転生 植田道久 @ueda0000

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