{第一章}出会い⑤ 俺はこの子から、逃れられない予感がする
{第一章}出会い⑤
純文学は魂の源泉だ。特に、明治から戦後にかけての純文学ほど、自然と人の営みを巧みに調和させた作品はそうないだろう。彼ら文豪と言われる傑物たちは、文字だけで芸術を作り上げていたのだ。特に太宰治は、彼自身の作風の変化が現実での転機と密接にリンクしている。
彼の幾たびの自殺未遂や、病棟での経験というのも、全て彼の小説の糧となっているのだ。そういった意味では、彼は文字通り命すら小説に捧げる、生粋の物書きと言えるのではないか。
俺は図書室で帰宅ルートを練る前に、次に読む本を検討していた。本棟三階に位置しており
、三年生のクラスが連なる二階から階段を上がり右に曲がると図書館に着く。異常な蔵書数を誇る図書エリアと、二十四時間開放の自習エリアに分けられている。
(やっぱり太宰の女生徒か、いや宮沢の銀河鉄道の夜も今後俺に降りかかるであろう厄介ごとへの慰めものとしてありかもしれないな)
本は心の栄養だ。脳へ送り込まれる情報を限りなく制限することが、情報過多の現代社会では重要になってくるのでは無いのだろうか。
(余計なことを考えないで、早く選ぶか)
二者択一の場合、直観に委ね目をつぶって選ぶのが俺流だ。
銀河鉄道の夜に手をかけようとした瞬間。
「ここは、川端の古都にするべき。古都は、総合芸術」
ある女が話しかけてきた。
「最近の俺には不幸ばかり降り積もるから、銀河鉄道に乗ってカムパネルラと一緒にどこまでも旅に出るんだ」
「それなら、よだかの星でいい」
「よだかは擦り切れるほど見たからもういいんだよ」
「そう、なら止めないね。次は或る少女の死までを読んでみて。主人公の苦悩を忘れてくれる女生徒の交流が、東京の街並みと組み合わさって良く書かれているから」
「次な。なかなかいい筋書きじゃないか。俺好みだ」
「やっぱり」
そういって満足げな微笑を浮かべたこの女は、海淵紫苑という名前の図書委員会だ。入学してすぐに委員会に入り、活動している文学少女というやつだ。深海のような濃い青の髪を再度テールでまとめ、目までかかっている前髪から覗くスカイブルーの目には、知性が宿っている。俺と文学トークができる唯一の人間だ。身長は百五十五とそこまで高くないが、凹凸のバランスが取れている。なぜか俺が昼休み図書室にいると毎回必ず蔵書整理をしており、話しかけ来るので、恐らく図書委員は深刻な人手不足に悩まされているのであろう。いくら本好きとはいえ、不憫な奴だ。
「黒木君、今日はずっと図書室いるの」
「ああ、どうせ入らない部活に、行かない所見たって意味ないからな。いるよ」
「私も、ずっといるから」
「やっぱ仕事が大変なのか。なんでわざわざ大変なことをするんだ?俺にはその気持ちが分からん」
「本、好きだし、家にいても本読むだけだから」
伏し目がちに答える海淵。
「凄いな。俺みたく書いてみたらどうだ?」
「そのうちね」
そう言うと彼女は、本の整理に戻った。俺も銀河鉄道を片手に、席に着こうとする。
ピロピロ、ピロピロ、ピロピロ
物音ひとつしない、彼女と俺しかいない部屋にそぐわない着信音が俺のスマホから鳴り響く。
(おかしいな、俺のスマホは通知を切っているんだが)
画面に目を向け、発信先を見ると、
“絶対出なさい”
との文字が。
心当たりが一つしかない俺が、出たほうと出ないほう、どちらの選択肢が良いのか思案していると
「どうしたの。誰からなの。冷や汗凄いけど」
俺のあまりの動揺ぶりを心配してくれる海淵。
「まあ、ちょっとな。借金の取り立てみたいなものだ。出るか出ないかどうしようかとな」
「それは、大丈夫なの?」
「まあ、出なかったら明日どのみち死ぬんだから出るかな。よし、出るぞ。俺は出るぞ」
二者択一で迷ったら直観に委ねる…!
意を決して着信ボタンを押す俺。
「この番号は、現在使われていないか、電波の届かないt」
「ちょっと歩!あんた私が気絶している間どうやって保健室に運んだのよ!てかあんた今どこいるの?あんた昨日気絶しちゃったんだから話詰めれなかったじゃない!今から詰めるわよ!」
機関銃の弾幕のように怒涛の勢いで話す大原女。キンキンうるさすぎてスマホと五メートル距離取っても聞こえるぞ。どんな声量してるんだこいつ。
「俺がおぶって運んだんだよ。あとお前はもっと飯食え。軽すぎて引いたぞ」
「あんたがおんぶbbbbbbb」
また気絶しそうになる大原女。
「したのは、まあ許すわ。私、ああいった浮ついた話題に慣れてないの」
(慣れてなさすぎだろ。除菌室にでもいたのか)
「でもあんたって思ったことをそのまま言うっていうかデリカシーは無いの?女の子に体重の話はNGよ」
「まあ、お前に離れてもらうために言ってるから他の奴には言わんよ。
「そんなに嫌い?私のこと」
急に声が不安げになる
「ああ、金輪際関わらないでほしいと切に願っている」
「あんた、次それ言ったら自転車壊すから」
「すみませんでした」
今度は閻魔様のような怒気のある声。こいつは表情だけでなく声も百面相なのか。
「とにかく、全部許してあげるから現在地教えなさい」
なぜか許される側になる俺
「その前に俺のスマホのロックをどうやって解除したのか教えろ」
「実際に会ったら教えるわ」
万事休すか。やはりこいつには逆らえないことを実感しつつ、図書室にいることを大原女に教え、通話は終わった。
アリの大群を象が踏みつけるような圧倒的で抗いがたい、力による蹂躙を味わった気分だった。放心状態の俺に、意に介さないで業務をしていた海淵が口を開く。
「凄かったね。彼女さん?」
「なんで俺とあいつはカップリングされる定めなんだよ。昨日初めて話したぞ」
「それにしては。凄いかみ合ってた」
「かみ合う?俺が一方的に殴られただけだろ」
「そう、かもね」
そこで会話は途切れる。死刑執行を待つ死刑囚は、一周回って天命を悟って冷静になるのだなと新発見をしつつ、俺は処刑人が来るのを黙って待っていた。
ガラガラガラ
(ああ、神様、来世はどうか、どうか普通の暮らしをください)
俺と目が合い、早歩きですり寄る大原女。
「逃げなかったのね、いい心構えだわ」
「ああ、逃げても逃げきれないからな」
この世は弱肉強食。俺にとっての天敵は、彼女なのだ。
「あんた、てかなんで昨日急に気絶したのよ。私割とびっくりしたんだからね!」
「びっくりしたらスマホに侵入するのか」
「私、昔少しそういったネットでの活動をしていた時があったから、あんたの情報を財布とかから入手して百通りぐらい試したら解除できたわ。歩、あんたパスワードが1225なんてロマンチックなところあるじゃない」
さらっとヤバいこと言った気がするが、まあスルーしよう。うん。俺は何も聞いていない。
「連絡先以外になんか変なことしなかったよな?」
「したとして痕跡なんて残すわけないじゃない」
得意げな大原女。
「お前、そこまでして俺が欲しいのか。俺は普通だぞ。その学校を壊すだっけ?本気なのか」
「いいえ、昨日の穂乃花ちゃんの一件や今日の機転の利いたフォロー、推薦のこともそうだし、昨日スマホを見せてもらったけど」
「俺は見せてないけどな」
「あんたってかなり凄い奴なのよ。正直見直したわ。性格は終わってるけど。それに私の境遇も大体察しがついたでしょ?私は本気よ」
心から見直したようにまっすぐアメジストのような目で見つめる大原女。やはり逃げ場はないようだ。そんなことより、
「おい、なにを見たんだお前はっ!」
俺はネットでそこそこ多岐にわたって活動しているので、心当たりがかなりあるのだが。ロックされたフォルダを解除されていないことを祈るばかりだ。
「まあ、ここには人がいるから学校探検の時にでも話すわ。あんたこの学校の仕組みを全く知らないようだからそこも含めてね」
「私は、気にしない」
唐突に作業をやめこちらを向く海淵。少し怖い。
「一応、こいつにもプライベートがあるわ。あんたって、こいつとどういう関係なの?」
「私たちは、本仲間」
「本?ああ歩ってラノベ?ってやつでそこそこ人気な作品書いてたけど読むほうも好きなのね。でもそれくらいの関係じゃ話しちゃまずいんじゃない?」
(俺に振るな大原女よ。というか今一つ暴露したぞ。海淵が知ってるやつで良かったが。しかも、なぜか海淵が大原女に張り合いだして、変な方向に向かっている気がしてならん。どうしたというのだ一体。
「あー、俺も自分のことはあんまり人に知られたくは、無いかな」
正直に言おう。
「黒木君。君はそういう人だったんだね」
なぜか失望の目線を海淵が向けてくる。
「どこから何が漏れるか分からんからな。普通を生きるためだ」
「じゃあ」
「なんだ」
躊躇いがちに海淵が口を開く。
「私とも、連絡先交換して」
「まあいいぞ、お前はこのピンk、大原女と違って俺の意思を尊重するしな」
「私も尊重するときはするけどね」
そんな大原女の戯言はお構いなしにQRコードを見せてくる海淵。
「ほらよ、アイコンも本なのか。良いな」
「うん、黒木君も猫なのいいね」
本好きどうし静かに通じ合う俺と海淵。
そのやり取りを退屈そうに見ていた大原女が、終わったと見るや否や
「じゃあ歩、行くわよ!あんたにこの学校の真髄を見せてあげるわ!」
と手を繋いで俺を連行しようとする。
(こいつ、距離感が近いというか自分の容姿が目を引いている自覚がないんだよな。今日日桜色の髪にツインテールなんていないだろ。この距離感については少し苦言を呈したほうがいいかもしれない)
「お前な、俺ら付き合ってもないんだからべたべたするのはやめろよ」
そう言った俺の顔を不思議そうに見ながらその視線をガッツリ握った手に向ける大原女。再び俺の顔を見て、窒息死寸前の人のように赤面する。
「あ、あんただって私をそうやってからかうじゃない!あんたにからかわれると私、なんだかおかしいっていうか、変な感じになっちゃうの!」
手を即座に放しつつ、必死の抗議をしてくる。
「分かった分かった。いったん落ち着けな?とりあえずそのことは良いんだけど、凌三を壊すなんてできるのか?いったいどうやってそんな事するつもりなんだよ」
至極まっとうな疑問を俺は投げかける。
俺とは少し距離をとりつつ前を歩いていた大原女がこちらに振り向き、
「そうね、まずこの学校がなんて呼ばれているかは知ってる?」
「いいや」
「でしょうね」
当たり前のように受け流す大原女。
「ここ、凌三高校は通称“鬼才が集う合戦場”と言われているの。そういわれるようになった所以は、この学校の唯一のシステムにあるわ」
「鬼才か、そんなに凄いところが近所にあったとはな」
「あんたが特殊なだけでここに入る人たちはそれ目当てで入るのよ」
「じゃあ、そのシステムってのは一体何なんだよ」
「それは、部活同士でのありとあらゆるいさかいを解決する為に作られた、“血戦”というものよ」
「…血戦、ずいぶん物騒な名前だな」
「実際、この学校はいつでも誰でもどんな部活を作ってもよいし、それで部が増えすぎるから部を削る会議があるぐらいには部活動を中心として運営されているのよ。変な部活がたくさんあって、それらが毎日しのぎを削りあってたの」
「あってたって、今は違うのか」
「違うわ。正確には私の姉が入学した去年から、血戦は暗黙の了解としてどの部活もしなくなったわ。姉は、全てを持っているから」
姉のことを話す大原女の表情は、曇り模様の中に一点の光が射しているような、コンプレックスや劣等感を持ちつつ、まだ憧れを捨てきれない、そんな顔をしていた。
「つまりその血戦?ていうのをやって姉はトップに立っているのか」
「ええ、大まかにいえばそうね。姉は荒れに荒れて混沌を極めていたこの学校に入学してから三か月足らずで全戦無敗ですぐにこの学校の頂点。頭取の座を握って、全ての面において改革を始めたわ。最初は姉に挑む人たちもいたんだけど、全員返り討ちにあった。それで過激な人たちもすっかりなりをひそめちゃって、姉の巧みな人材手腕で、広告や学業、資金調達や電子化など様々な分野で注目を集める高校となったわ。前までは血戦目当てで入ってくる人たちが多かったけど、今年からは姉に憧れてくる人もかなりの割合を占めていると思うわ。そういった意味でも、やっぱり姉は凄いと思うわ。」
ひとしきり語り終えた大原女。時刻は十時を回っている。みんなは各々気になる部活に見学に行ってるのだろうか。
「この話を聞く限りじゃ、この学校を壊すとかしないほう良いんじゃないか?少なくとも俺は以前の凌三には行きたくないな」
話を聞いた所感を正直に話す俺。
「まあ、表面上はそうでしょうね。誰だって一人ですべてを変えた姉の偉業を美談として受け取ると思うわ」
含みのある言い方をする大原女。
「つまり、実際はそんな上手くいってないってことなのか」
「ええ、もちろん彼女の信奉者もたくさんいて依然権力は盤石だけど、問題があるのよ」
歩くのをやめこちらに振り向く大原女。俺らは玄関を出て、左の、噴水と草原の広がる憩いの場のような場所に来ていた。噴水のそばによると彼女は続きを話し始めた。
「その問題てのは、”やりすぎた“ことにあると思ってるの。彼女は強すぎたのよ。強すぎるがゆえに、彼女の熱烈な信者たちは、一般の部活間で行われる血戦にすら介入を始めて、少しでも不審な動きをすれば指導するようになっていったの。姉がこの事実を知っているかは知らないわ。だけどね、昔は確かに荒れてはいたけど、血戦という定められた秩序の元、ルールの範囲内でやりたいように活動出来ていたわ。でも今はそれが出来ない。そうするとどうなると思う?」
「個人同士で秘密裏に問題解決が図られ、その結果禍根を残す形での解決が増えていくってことか」
俺の推察を述べる。
「やっぱりあんた、私のしもべに最適だわ。そうなの。明るみに出ないだけで、そういった問題が増えているの。云わばこの学校はディストピアよ。一見天国に見えるけど、内情は全然違う。その間違った学校の形を正したいし、ここからは私情だけど、正すことで私が姉を超えれる人間であることを証明したいの。私は姉に、勝ったことが無いから。でも、私ひとりじゃまた姉に負けるかもしれない。だから、あんたを私のしもべとして一緒に姉を、この学校を壊して、今の凌三でも以前の凌三でもない、新しい秩序を作っていって欲しいの」
そう語る彼女の目は、怯えをはらんでいるようだった。姉に一度も勝ったことが無い。それは人生において大きなコンプレックスとして彼女の中に内在しているのだろう。それでもこいつは諦めきれず、こんな壮大な計画を立てて奮起しようとしているのだ。
(眩しいな。眼が眩むほどに)
しかしその眩しさは太陽を受けて輝く月のような、太陽が無かったら目に入ることすらない、そんな不安定な輝きだった。
「お前、どん位俺の秘密を知ってて、それをどうする気だ」
「まあ私の目を引いたやつを言ってけば、帰宅RTA、あれ作ったのってあんたなのね、アプリをインストールしていろいろ登録すれば、あとは自動計測ってかなり競技として画期的よね。ルール設計も放課後のチャイムが鳴ってから事細かに不正ができないように作られてて感心したわ」
「おい、俺が作成者ってなんで分かんだよ」
「あんたネットでいろいろ噂あるからそうじゃないかと思っていっただけよ。ほんとに作成者なのね。やるじゃない」
頭をなでようとして赤面してやめる大原女。
「お前に素直に褒められると気持ち悪いな」
「い、いいじゃない。私って、素直なの」
ウィンクをする大原女。正直可愛い。
「あとはそうねー。あ、さっきも言ったあんたのラノベ。名前なんだっけ。“俺の幼馴染が指名手配になっちゃったので一緒に逃げてみました”みたいなやつ。あれ、百万部売れてて凄いじゃない。私にはあんまり良さが分からなかったけど、ヒロインはツインテールでかわいかったわ。そん位かしら。まあ大体のあなたのネット活動は知っちゃったわね。私に協力しないともしかしたら、てことはあるかもね。まあ協力してくれれば良いからね。さあ、あんたはどうするの」
四面楚歌の状況。俺の帰宅RTA毎日継続はほぼ不可能になったうえ、平穏な生活ももうこいつの問題が解決しない限り無理なのかと、あいつが転入してきた時点で覚悟はしていた。
(もう、やけくそだな)
「分かったお前の申し入れ、受け入れてやるよ」
「ほ、ほんとに?ほんとに良いの?」
自分からここまで俺を囲い込んできたくせに、俺が協力する決断をしたことが信じられないようだ。だが俺も馬鹿ではない。
「その代わり一つ条件がある。最初にする血戦で負けたり、相性が悪いとお前が判断したらそれで終わりだ。あと、俺の発作、詳しくは言えないけど予兆があるんだ。それが来たら絶対に俺を解放させろ。それが飲めなきゃ、俺は家に引きこもり二度と学校に行かない」
「ええ、まあそれは飲むわ。流石にあんたの学生生活を壊すまで拘るつもりは無いし。私も常に一人だったから、結局協力しないほうが良いってなるかもしれないものね。そしたら一人で頑張ってみるわ」
「お前ってたまに常識的ってか普通だよな」
「私はいつも普通よ。あんたの前だけなんだから。おかしくなっちゃうのは」
(ん?こいつってやっぱナチュラルツンデレだよな。枯れ果てた俺じゃなきゃいまので惚れてるのかもしれないな)
「まあひとまずよろしく。部の名前は決めているのか」
「もちろん考えてるわ。その名も…」
噴水外周の座るスペースに立ったかと思えば、なぜか俺を指さしながら
「凌三ぶっ壊し部よ!」
と、高らかに宣言するのであった。
(だ、だせぇ、センスが漫画ちょっとかじり始めた小学生だぞ)
でも当人は満足げな表情をしているので、本人が良いなら良いかという気になってきた。
「あんたはそうね、副部長にしてあげる」
「そりゃどーも」
「もう少し感謝を表しなさいよ!」
沸点が異常に低い大原女。だがこれにも俺は慣れてきたんだ。
「大原女部長の仰せのままに」
芝居がかった所作でそれっぽい動きをしてみる。それが効果覿面だったらしく
「そう!あんたはそうしてれば良いの。ついでにあんたのひねくれしわしわ体質もあたしが直してあげるわ!」
一瞬にして機嫌を取り戻す大原女。良かったね。
俺はこの活動にやる気を出したわけじゃない。だけど、一回ぐらいこいつに協力するのも悪くないと思わされただけだ。一回だけ。こいつの活動に付き合ってそれで終わり。そうすれば彼女も諦めがつくだろう。
噴水のそばで揺れ動く君は、笑顔のせいだろうか。出会ってから一番の輝きを見せていた。俺の抱いていた先の見えない不安を忘れるほど可憐に。正門から続く道に植えられた桜が、彼女と呼応するように、揺れていたせいなのかもしれない。
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