第3話

 ♦


 次の学年に向けて学習のまとめに入ったころ。

 授業前、先生と藤野ふじのくんが教卓の前に立った。


 「藤野くんは引っ越しのため転校します。今日は彼にお別れの手紙を書きましょう。」


 クラス中がどよめくなか、先生は一枚の紙を配っていった。


 わたしの心の中も

 どうして、なんで、いやだ、さみしい、と

 いろんな声と感情が入り混じり、ざわついていた。

 1年生のときから仲の良かった藤野くん。

 離れるとわかってはじめて、彼に特別な感情があることに気がついた。


「この時間、おれはまじでヒマだ~」

 当の本人は机に突っ伏してだらだらとしている。照れ隠しもあるのかもしれない。

 そんな姿を横目に、お別れの言葉を綴っていく。

 

 楽しかったね

 さみしいよ

 また会いたいな

 みんなが書くような言葉だけで、いいの……?


 ——ほんとうは、1年生のころからずっとすきでした

 

 手紙の裏に描いた絵のなかにメッセージを忍ばせたとき、ざわついていた心が落ち着いていくのを感じた。


 終業式の日、藤野くんへみんなの手紙を綴じた冊子が渡された。

 それきり彼と会うことはなかった。

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