第3話
♦
次の学年に向けて学習のまとめに入ったころ。
授業前、先生と
「藤野くんは引っ越しのため転校します。今日は彼にお別れの手紙を書きましょう。」
クラス中がどよめくなか、先生は一枚の紙を配っていった。
わたしの心の中も
どうして、なんで、いやだ、さみしい、と
いろんな声と感情が入り混じり、ざわついていた。
1年生のときから仲の良かった藤野くん。
離れるとわかってはじめて、彼に特別な感情があることに気がついた。
「この時間、おれはまじでヒマだ~」
当の本人は机に突っ伏してだらだらとしている。照れ隠しもあるのかもしれない。
そんな姿を横目に、お別れの言葉を綴っていく。
楽しかったね
さみしいよ
また会いたいな
みんなが書くような言葉だけで、いいの……?
——ほんとうは、1年生のころからずっとすきでした
手紙の裏に描いた絵のなかにメッセージを忍ばせたとき、ざわついていた心が落ち着いていくのを感じた。
終業式の日、藤野くんへみんなの手紙を綴じた冊子が渡された。
それきり彼と会うことはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます