第4話

 恋という漢字もその本当の意味も、知らなかったとしだった。

 だから、さよならの言葉のあとに好きだと言えた。

 続きがほしい、なんて思わなかった。


 それからは、

 砂糖たっぷりのケーキみたいな甘すぎる恋も、

 深く煎ったコーヒーのように苦い恋もしたし、

 味わうことのできないほど、追い詰められた恋もあった。


 けれど10歳に満たないころの恋は、

 ただ単純に、好きだという想いを伝えられただけで幸せだったのだ。


 一粒の金平糖みたいな、きらきらとして、純粋な甘さだけを残す恋。

 少なくとも、わたしにとっての『はつこい』は。

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