第6話 勧誘②

 丸一日ほど荷馬車に揺られていると、遠くに村が見えて来た。


「あ、見えました」


 ヴェルネの評価は100点満点と言っていいレベルだった。貧乏効果もあるのだろうが、名うての冒険者家族の血を引いているというの、もきっと影響しているのだろうな。


 で、お試し狩りを終えた俺達は、一路ヴェルネの故郷へと向かう事に。その目的は勿論、パーティーメンバーの勧誘だ。そう、新たなメンバーを勧誘するため、俺はここへとやって来ているのだ。


「やっとか」


 アレスワールドの都市間はゲートで繋がれているため、基本、一瞬で移動が可能となっている――まあそこそこのお金は取られてしまうが。だがそれはある一定の都市間だけなので、僻地などにある小さな村にはこうやって馬車などを使って移動する必要があった。


「それじゃあ工房に行きましょう」


 到着したのはクレール村。人口300人ほどの、まあ村としてはそこそこデカい規模の場所だ。ここはヴェルネの母親の生まれ故郷で、父親と祖父の死後に住んでいた場所から引越しし、以降、冒険者になるために村を出るまで彼女はここで生活していたとの事。


「墓参りを先に済ませてもいいんだぞ?」


 彼女の母親はもう既に亡くなっている。だから先に墓参りを進めたのだが――


「ありがとう。でも大丈夫よ。母の遺骨は、父と同じところに収めてあるから」

「そうか……」


 どうやら墓は別の場所だったようだ。


「家も処分済みだから、行きましょう」


 家も処分済みなのは、冒険者として生きていく覚悟の表れって所かね。まあ単に、金食い虫の符術師だから、初期資金として家を売っただけって可能性もあるが。その辺りは別にどうでもいいか。


「おや、ヴェルネちゃんじゃないかい」

「冒険者は辞めたのかい?」

「いえ。今日はガッソーさんに会いに来たんです」

「あの偏屈爺さんに?」

「ええ、お願いしたい事があって」


 と言った感じのやり取りを道行く村人もぶ共と繰り返しながら、俺達は目的の場所へと向かう。こういうのがあると、田舎ってのは本当に面倒くさいなって感じてしまう。まあ何時間も取られる訳じゃないからいいけど。


「ここです」


 村はずれにある、目的の工房へと到着。工房は、ほとんど民家と変わらない感じだ。まあ小さな村で個人経営なら、こんなもんなんだろう。


「ガッソーおじさん!ヴェルネです!」


 ヴェルネが玄関前の鐘を鳴らし、そして大声で呼びかけた。


「……」


 が、反応はない。何度か繰り返してもそれは同じ。


「どうやら出かけているみたいだな。取り敢えず、帰ってくるまで待つとしようか」

「ええ」


 約束を取り付けて来た訳ではないので、いなくてもまあしょうがない。なので俺はヴェルねと勧誘予定のガッソー――クラス・マエストロを待つ。


 マエストロと言うのは製作職だ。武器とか防具の。なので戦闘能力は低く、冒険者には向いていない。だが安心して欲しい。俺の資金稼ぎ能力とスキルを使えば、最低限普通の戦士位には戦える様になる。


 ま、あくまでも普通レベルだけどな。強いと言えるほどには流石にならない。だがまあ、普通レベルでも十分だ。クリアに支障は出ないさ。なにせやり込みプレイヤーである俺が選んだ、究極超人の次に優秀なシーフ主体のパーティ―だからな。ちょっと難易度が上がるだけで、クリア自体は問題ない。


 小一時間程待ったかな。


「ん?ヴェルネではないか!」


 お目当てのガッソーが戻ってきた。

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