ep1-2:退屈な日常。分岐点の春。

春。出会いと別れの季節というが、出会いの記憶って覚えているんだろうか。

よほど印象的な出会い方をしないと覚えてないよね。

私、和泉梓いずみあずさはそんなことを考えていた。


今、自分を取り巻く環境は最悪なものだ。

大学では友人と呼べる友人がおらず基本一人。

一人暮らしを始めたおかげで毎日が孤独だ。


遠距離で付き合っていた恋人がいたが、どうやら他の女とデキていたらしい。

まあ数か月間だけの付き合いだったが、やはりなんとも思わないわけがない。


さてこれからどうしようか。

この退屈な日常に終止符を打ってみようか。


バイトの帰り道。線路沿い。ここの住宅街はいつも人はいない。

目の前に踏切が見えた。


ここにしよう。誰もいないし、自分の最期は多くの人に見られたくない。

孤独な奴が自分の最期で人に囲まれるなんで皮肉じゃないか。


ゆっくりと踏切に向かって歩き出す。

踏切までほんの10mほどだがなかなかたどり着かない。


うん。やっぱりいざ行動すると怖いな。

軽い気持ちで動いてしまったがその時が来ると足がすくんでしまう。


それでも一歩一歩進んでいく。


やっと線路までこれた。あとは待つだけ。


空を見上げる。腹立たしいほどに星が輝いている。

星を見ながら今までの記憶が頭に浮かんでくる。


つらいことも。楽しいことも。


振り返ってみると案外悪くなかった。

ただこの先私がどういう人生を送っていくのか、まったく想像がつかない不安。


過去を振り返っても仕方がない。終わったことなのだから。

未来への希望が見えないのだ。退屈な日常を過ごし、孤独に生きていくことが耐えられない。


目を瞑る。そろそろだろうか。

今までの人生に思いを馳せ、最期を迎える覚悟を決める。


ふいに、背後から声がした。


「なあ、なにやってんだ?」


私は驚いて振り返った。





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或る青春を謳歌せしものたちへ 夜鳴 @Yonari

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