第6話 覚醒

「ん.....ここは....?あれ....?確か俺、死んだはずじゃ....」


目を覚ました俺は、病室のベッドの上にいた。体には痛みもなく、ただ違和感を感じる程度。だが、何より不安なのは、目の前の状況だった。記憶が曖昧で、俺がどうしてここにいるのか、さっぱりわからない。


その時、ドアが開いて、白衣を着た医者と、見知らぬ男が入ってきた。男は冷徹な表情をしていて、その場に立つと静かに言った。


「目を覚ましたか。よかった。」


医者は特に感情を込めることなく、淡々と説明を始めた。


「君は腕をもがれ、生活に致命的な損傷を受けたが、君は救われた。今、この状態で腕があるのは、君が再生したわけではなく、別の理由だ。」


俺は言葉を失ったまま、その説明を聞くしかなかった。だが、どこか冷静になってきた自分がいた。


「君の腕は相当ひどい状態で我々も修復のしようがなかった。」医者は続ける。「代わりに、我々は特別な手術を施した。君の体に適した力を持つものを取り付けた。今、君の右腕には怪物の力が宿っている。」


その言葉に、俺は動けなくなる。


「腕は今は普通の人間のもののように見えるが、爪がしまわれているだけだ。使い方次第では、強力な力を発揮するだろう。」


「使い方次第…?」と、俺は呟く。


ノルトンがその場に静かに答える。


「暴走することもあるから、力を抑えることを学ぶ必要がある。それを怠れば、君はその力に飲み込まれることになる。」


医者は続けて言った。


「君は今、一般人としてではなく、異常な力を持つ存在として生きている。だが、それが君にとってどういう意味を持つかは、これから分かるだろう。」


一瞬の静寂が続いた後、ノルトンが口を開く。


「君には選択肢がある。ただし、選んだ後の結果は君自身の責任だ。」


それだけ言うと、二人は無言で部屋を出て行った。残されたのは、俺一人だけであった。


その後、医者とノルトンが部屋を出ていくと、部屋の静寂が深くなる。残された俺は、呆然と天井を見つめながら、何が起きたのか、どうしてこんなことになったのかを考え続けていた。


「怪物の力が宿っている...?」


そんなことを言われても、どうにも実感が湧かない。普通の人間であったはずの自分が、突然、怪物の力を持つ存在だなんて信じられなかった。それに、腕がどうなっているのかもよくわからなかった。外見は、普通の人間の腕のように見える。


意を決して、俺は右腕を見下ろした。その腕をじっと見つめながら、力を入れてみることにした。何も考えずにただ握りしめる。


そして、その瞬間だった。


「ガッ」


腕の中から、何かが動き、次の瞬間には、右手の爪がスッと現れた。鋭く、まるで鋼のような爪だ。それは、まさに怪物のようなものだったが、今や自分の体の一部として、俺の意志に反応していた。


「なっ...!」


驚きと恐怖が入り混じる。慌てて手を引っ込めると、爪は再びしまわれ、元の人間の腕に戻る。だが、あの感覚は確かだった。あれが、医者とノルトンが言っていた「怪物の力」だというのだろうか。


「これが...俺の力?」


その問いを自分に投げかけながら、俺はゆっくりと腕を動かしてみた。力を入れたり、緩めたり。爪はまだ出てこない。ただ、どこかでその力を感じる自分がいた。


「使い方次第で...暴走する?」


ノルトンの言葉が頭の中で響く。もし暴走したら、どうなるのか?何も分からない。けれど、この力を制御しなければならないのは確かだ。どうすればいいのか、わからないまま、俺はその腕をもう一度見つめるのだった。












あとがき(注釈)

主人公に取り付けられた怪物の腕は隅々まで滅菌消毒をされており、主人公が感染することはありません。なお、主人公を回収した医者は怪物たちが蔓延る中、手術室で引きこもっていたところにノルトンが来て医療区域から脱出させることを条件に手術に応じました。※医療区域のマップは後日投稿予定…。また、ノルトン視点のものも…!。次の投稿をお楽しみにー。

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リハビナ・パンデミック!〜終末世界なスペースコロニーで楽しくサバイバル〜 風吹いても名無し @kazehuitemonanasi

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